化けの皮が剝がれた日本の再生医療 ハートシート、コラテジェンの相次ぐ市場撤退 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする 数例での有効性「推定」で公的保険を適用する「再生医療早期承認制度」 厚生労働省の薬事審議会は2024年7月19日、重症心不全に対する再生医療等製品「ハートシート」について、有効性が見られないとして正式承認を否決した。これを受けてテルモ社は販売終了を発表した。この1カ月前の6月24日には、閉塞性動脈硬化症に対する再生医療等製品「コラテジェン」が、市販後調査で治験の結果を再現できなかったとして、アンジェス社が正式承認申請を取り下げて販売を終了したばかりである。 「国家プロジェクト」の大義名分の下、10年以上も患者と国民を巻き込んで暴走してきた「日本の再生医療」に暗雲が立ち込め始めた。てか、化けの皮が剝がれ始めた。 再生医療は2012年に、現・京都大学iPS細胞研究所名誉所長・教授の山中伸弥氏による人工多能性幹(iPS)細胞の作製技術がノーベル生理学・医学賞を受賞したことが契機となって、第二次安倍晋三政権のアベノミクスの経済成長戦略の1つに位置付けられた。 しかし、山中氏が受けたノーベル賞は、分化成熟した細胞が受精卵レベルに逆戻り可能であることを示した「初期化(リプログラミング)」に関するド基礎の業績に対してである。これを臨床レベルでの臓器の再生に短絡的に直結させる発想は、少しでも臨床の素養がある医者であれば誰でも違和感を覚えたはずである(関連記事「iPS細胞への過剰な期待を煽るべきでない」)。 しかしながら、臨床の素養がない政府は、iPS研究を含む再生医療に10年にわたり1,100億円の巨額支援を打ち出した。医療分野では異例の規模である。さらに翌2013年に医薬品医療機器等法(薬機法)を改正し、それまでの医薬品や医療機器とは別に「再生医療等製品」という分類を新設した。そして、2014年にはこの再生医療等分野の製品を迅速に実用化するため、有効性が「推定」された再生医療等製品を対象として、条件と期限を設けた上で「仮承認」を与える「条件及び期限付製造販売承認制度」(いわゆる「再生医療早期承認制度」)が創設された。 この制度は、「患者に早く新たな治療法を届けるため」という名目ではあるが、数例の患者での臨床試験で有効性が「推定」されれば、公的医療保険の適用で製品を販売できるという極めて乱暴で無謀な制度である。この制度の下地をつくったのは経済産業省の研究会で、ハートシートの開発者である元・大阪大学心臓血管外科教授の澤芳樹氏はこの研究会の委員だった。そして、ハートシートはこの制度の「第1号」として承認された。 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする ×