【緊急寄稿】乳腺外科医事件、差し戻し控訴審の無罪判決を受けて 浜松医科大学教授 大磯義一郎 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする 〔編集部から〕 術後の女性患者にわいせつな行為をしたとして乳腺外科医が準強制わいせつ罪に問われていた事件の差し戻し控訴審で、東京高裁は昨日(3月12日)、一審の無罪判決を支持し、検察側の控訴を棄却した。医療界、特に外科医療に大きな波紋を広げた本件について、医師兼弁護士で浜松医科大学教授の大磯義一郎氏に緊急寄稿してもらった。 医の倫理に反した二審の検察側証人 検察の当初の起訴事実は物理的にも状況的にも実行困難で、通常ならありえない内容だった。にもかかわらず、当たり前の結論が出るまで105日の勾留と9年の年月がかかったことは大変遺憾である。 本件では主に①被害者証言の信用性、②DNA検査の証明力が争点となった。今回の差し戻し控訴審の判決は、①について「せん妄の可能性を否定できず、証言を補強する独立した証明力の強い証拠が必要」、②について「口腔内細胞が付着した可能性が否定できず、被告人がなめたと断定できないことから、被害者証言を支えるだけの十分な証明力があるとはいえない」と、基本的に最高裁判決の骨子を受けたものとなっている。 特に①について、二審での検察側証人の医師が「医学的に一般的でないことが相当程度うかがわれる」(最高裁判決より引用)内容の証言をしたこと、それによって本件一連の訴訟で唯一の有罪判決が出たことは大きな問題である。 訴訟である以上、勝ちたいという姿勢は理解できなくもないが、検察は公益の代表者である点を忘れてはならない。また、専門家の立場で「医学的に一般的でないことが相当程度うかがわれる」証言をすることは医の倫理に反する。本件では不明ではあるが、「御用鑑定人」や「鑑定屋」が訴訟をゆがめるのは民事ではよく見受けられるが、刑事裁判ではあってはならない。 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする ×