〔編集部から〕気鋭のドクターが独自の視点で論考を展開する人気連載「Doctor's Eye」。今月から東京都立神経病院脳神経内科/副院長の鈴木重明氏の監修の下、同院の先生方に担当制で執筆していただくことになりました。脳神経内科領域を中心に、話題の最新論文を日常臨床の立場で徹底解説していただきます。 研究の背景:非定型な認知症、縦断的研究は少ない 後部皮質萎縮症(posterior cortical atrophy:PCA)は、後頭葉・頭頂葉の萎縮と視覚認知障害を特徴とする変性疾患である。臨床現場で遭遇する機会は多くはないが、その特異的な臨床症状や経過は、他の認知症とは一線を画すインパクトがある。背景病理は、大部分がアルツハイマー型認知症(AD)であるが、いわゆる「物忘れ」で発症するADとは異なる非定型な病型に位置する。 これまでPCAに関する横断的研究は幾つかあるものの、前駆期症状や診断過程について言及された縦断的研究は少なかった。そこで、PCAに関するこれまでの縦断的研究の中では最大の規模であり、日常臨床でのエッセンスがちりばめられた論文を紹介する(Neurology 2025; 13; 104: e213559)。