リハビリテーション薬剤の概念とエビデンス

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ポリファーマシーは高齢者の健康悪化の原因に

 超高齢社会の到来により、医療に求められる役割も変化してきており、急性期医療の需要に対して慢性期医療の需要の比重が高まってきている。

 厚生労働省が示した『保健医療2035提言書』では、2035年までに必要な保健医療のパラダイムシフトの1つとして、「キュア中心からケア中心へ」を挙げている。そこには「疾病の治癒と生命維持を主目的とする『キュア中心』の時代から、慢性疾患や一定の支障を抱えても生活の質を維持・向上させ、身体的のみならず精神的・社会的な意味も含めた健康を保つことを目指す『ケア中心』の時代への転換」を図ることが掲げられている。

 この「ケア中心へ」という考え方は高齢者の薬物治療においても同様であると考える。慢性疾患に対する薬物療法は、疾病の治癒というよりも疾病のコントロールや症状緩和の意味合いが強く、長期的な治療が必要となる場合が多い。また、高齢者は多くの併存疾患により多剤併用となるケースが増える一方で、加齢に伴う生理機能の低下により薬物有害事象が起きやすいといわれている。必要以上に多くの薬剤を使用している状態はポリファーマシーと呼ばれ、薬物有害事象のリスク上昇、服薬過誤、服薬アドヒアランス低下などの問題につながる。

 高齢者に多く見られるふらつき、記憶障害、せん妄、食欲低下、便秘、排尿障害といった薬物有害事象は、老年症候群と共通していることから、薬剤起因性老年症候群と呼ばれ、患者の健康状態の悪化に直結する。高齢者の薬物治療においては疾患のコントロールに加えて、ポリファーマシーの観点から患者の生活や動作に注目し、日常生活動作(ADL)の低下を来さないよう薬剤の必要性を検討することが必要となってくる。

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