徳川幕府の公式記録『徳川実記』によると、九代将軍家重は「御多病にて、御言葉さわやかならざりし故、近侍の臣といえども聞き取り奉ること難し」とある。家重の不明瞭な発音を聞きわけることができたのは、北町奉行大岡越前守の家系に当たる大岡忠光ただひとりで、かれが将軍のいうことを家臣たちに通訳して伝えている。