アフリカ・サハラ砂漠の南側に帯状に広がる草原地帯、サヘルと呼ばれるこの一帯は、年間の降水量が100~200ミリと、日本のわずか10分の1しかありません。かつては「自然の牧場」と呼ばれたものの、干ばつと過度の放牧で急速に砂漠化が進み、貧困、紛争などの影響もあって現在は慢性的な食糧不足に陥っています。特に、農作物の端境期に当たる5~7月は「ハンガーギャップ」と呼ばれ、備蓄食糧が不足、栄養失調率が毎年高まる傾向にあります。今回は、国境なき医師団(MSF)が30年以上にわたって活動してきたサヘル地帯の現状と課題、そして新たな対策について考えていきます。