患者さんの声<1> システム会社の営業職で忙しい日々を送っていた菅沼さん。お客さんとの付き合いで深夜まで飲酒し、ラーメンを食べるという生活を繰り返していたそうです。体調の異変に気付いたのは、2010年末。体重が減り、いくら水分を取っても喉の渇きが止まらず、尿意のため夜中に必ず起きていたといいます。 水分を取る量が多くなって、夜中に起きるだけでなく、会議も1時間程度しか我慢できなかったんです。そこへ2011年3月の東日本大震災が起き、水が手に入りにくくなりました。もともと甘い飲み物が好きなので、水代わりにずっとジュースを飲んでいたんです。すると、体調がもっと悪化しました。最初は頻尿を疑って薬を飲んだけど治らない。次にドライマウスかと思って専門の外来を受診したんですが、これも違う。ネットなどを調べてどうも糖尿病らしいということに気付き、風邪をひいていたこともあって、2011年5月に専門医のいる診療所を訪れました。 1週間後に血液検査の結果から、糖尿病と診断されました。目の前が真っ暗になるほど絶望しましたよ。何せ、自分には縁のない重い病気と考えていましたから。実際、前年4月に受けた健康診断では、血糖値が60~70ミリグラム・デシリットル(mg/dL)、ヘモグロビン(Hb)A1cが6.0%程度だったんです。糖尿病と診断されたのもショックでしたが、血液検査の結果もそれぞれ498mg/dL、13.7%と衝撃的な数値でした。先生に「普通なら動けない、もしくは昏睡(こんすい)状態になっているはず」と言われたくらいです。 診断された日に、飲み薬のメトホルミンとインスリングラルギン10単位を注射するよう言われました。自分で自分の体に針を刺すというのはとても恐ろしかったんですが、実際にやってみるとそれほど痛くありませんでした。それよりも、体が楽になったのと夜中にトイレで起きないでぐっすり眠れたので、「インスリンってすごいなあ!」という感動の方が大きかったですね。 診断されたのを機に忙しくない部署に異動させてもらい、禁酒して食生活を改めました。といっても暴飲暴食をやめて、少しだけヘルシーなメニューを決まった時間に食べるようにしただけです。運動も、ダイエットDVDを見ながら自宅でやる程度ですが始めました。こうしたことも相乗効果になってか、治療開始から1カ月で8単位、翌々月には6単位というふうに順調に投与量が減っていき、現在は2単位。先生には今夏中に離脱できるだろうと言われています。 インスリンが離脱できたら......すでに旅行も行ってるし、今年3月には大好きなお酒も解禁しましたし、やりたいことといったら営業職に戻ることですね。まだ怖いので離脱してから少し時間がたってからですが、きついけれど営業はやっぱり面白いんです。1年余りでその可能性が見えるほど回復できたのは、すぐにインスリンを使うよう勧めてくれたからではないかと思っています。ほかの病院に行って検査結果が出るまでに数カ月かかり、飲み薬だけで治療を始めていたら、と思うと恐ろしくなります。先生には本当に感謝しています。 (この患者さんは東京・蒲田のしんクリニックに通院されている方です)