順天堂大学大学院 教授 河盛 隆造 先生 インスリンは1921年夏に、カナダ・トロント大学で発見されました。そしてわずか2カ月後には、1型糖尿病で治療法がなく、亡くなる寸前であった少年に注射され、劇的な効果を発揮しました。以来90年間、インスリンは"魔法の薬"、"奇跡を生む薬"として絶対的な評価を受け続けています。インスリンを合成し、食事や運動に応じてタイミング良くインスリンを緻密に分泌する膵(すい)臓のベータ(β)細胞が破壊されてしまったため、生きていくのにインスリン注射が1日3~5回必須である1型糖尿病の方にはもちろん、ありふれた病気、2型糖尿病の方であっても、自らのインスリン分泌能力が高度に低下してしまった方にも、インスリン治療が必要になります。