治りにくいなら受診を―口内炎、背後に重大疾患も

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 風邪を引いた後や疲れがたまったときに表れる口内炎。自然に治ることが多いが、東京歯科大学市川総合病院(千葉県市川市)口腔(こうくう)がんセンターの野村武史センター長は「背後に重大な疾患が潜んでいるケースもあり、軽視するのは危険です」と注意を呼びかける。

▽通常は自然治癒

 口内炎は、口の粘膜に起きる炎症で、さまざまな原因と種類がある。代表的なのはアフタ性口内炎で、ストレス、睡眠不足、栄養の偏りなどで免疫機能が低下すると発症しやすい。

 入れ歯や矯正器具の接触で粘膜が炎症を起こして赤くなるカタル性口内炎は、アフタ性と違って周囲との境界が不明瞭なのが特徴だ。

 ヘルペス性口内炎は、免疫機能力が低下すると体内に潜伏する単純ヘルペスウイルスが活性化し小さな水疱(すいほう)をつくる。口腔内の常在菌の一つで、真菌(カビ)の一種のカンジダ菌が引き起こすカンジダ性口内炎は、ヘルペス性と同様、免疫機能の低下でカンジダ菌が増殖して発症する。

 薬剤性口内炎は、殺細胞性抗がん剤や抗リウマチ薬などの薬の副作用によって生じる。難病のベーチェット病やクローン病など、全身疾患の初期症状として口内炎が多発することもある。

 アフタ性口内炎やカタル性口内炎は通常1、2週間で自然に治るが、痛みや炎症が強い場合はステロイド軟こうなどを使う。ウイルス性口内炎やカンジダ性口内炎は高齢者に多く、早めに専門医療機関に相談をして抗ウイルス薬、抗菌薬による治療が必要だ。「常用している薬剤が原因となっている可能性があれば、治療を受けている主治医に相談をしてほしい」

▽見分けにくい舌がん

 また、口内炎に似た症状で特に注意が必要な病気に口腔がんがある。口の中であれば歯以外のどこにでもできるが、日本人に多いのは舌がんで、病変が大きくなったり、しこりのように硬くなっていたりしたらがんの可能性が高いという。ただし、「口内炎と初期の舌がんを見た目で区別するのは難しい」。

 口内炎とがんの鑑別には、専用のブラシで病変部をこすり粘膜から細胞を採取して検査する細胞診が一般的だ。がんの疑いがあれば、さらに組織の一部を切り取って詳しく調べる生検が行われる。

 野村センター長は「口内炎がなかなか治らなかったり、繰り返し同じ場所にできたりする場合は、口腔外科や耳鼻咽喉科などへの受診を。また、口内炎かそうでないかを気軽に相談できるかかりつけの歯科医を持ち、定期的に口腔内をチェックしてもらいましょう」と助言する。(メディカルトリビューン=時事)

   ◇   ◇

 東京歯科大学市川総合病院の所在地 〒272―8513 千葉県市川市菅野5の11の13 電話047(322)0151(代)

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