血糖高いと海馬が縮小―糖尿病でない人でも

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 糖尿病は、認知症の主要なリスク因子の一つ。しかし、高齢者を対象とした最近の研究で、糖尿病とされるレベルでなくても、血糖値が高い、あるいはインスリン(膵臓=すいぞう=から分泌される血糖を下げるホルモン)の分泌能が低い人は、認知症に特徴的な脳の変化が既に表れていることが分かった。

▽境界型でもリスク1.3倍

 現在日本では、全国の高齢者約1万人を対象とした認知症研究「JPSC―AD」が進められている。研究グループの金沢大学大学院(金沢市)脳神経内科学の小野賢二郎教授らによると、糖尿病の人はそうでない人に比べ、アルツハイマー型認知症(AD)の発症リスクが約2.1倍高いことが、福岡県久山町の住民対象の調査「久山町研究」で報告されている。

 小野教授らが2022年に発表したJPSC―ADのデータ解析でも、血糖レベルを反映する血液検査項目ヘモグロビンエーワンシー(HbA1c)の値が、糖尿病が強く疑われるレベル(6.5%以上)の人は、AD発症リスクが約1.7倍高いことが分かった。

 また、健常から糖尿病と診断される境界領域の異常(5.7~6.4%)がある人のADリスクは、約1.3倍高かった。

▽記憶を引き出す部分が縮小

 AD患者は発症早期から、記憶に関わる脳の器官、海馬(かいば)の縮小が高率で見られる。

 小野教授らは、糖尿病ではない人を含む、認知機能が正常な65歳以上の高齢者7400人を対象に、HbA1c、グリコアルブミン(GA)と、分泌能指標「HOMA―β」などと海馬の体積との関係を検討した。

 その結果、HbA1cが高値、GAが高値またはHOMA―βが低値であるほど、海馬の体積が小さいことが分かった。また、糖尿病でない人だけで同様の検討を行うと、GAが高値、またはHOMA―βが低値であるほど、海馬の中でも記憶の引き出しに重要な海馬采の体積が小さいことが分かった。

 「糖尿病とされていない人でも、認知症の前兆と考えられる海馬の縮小が見られ、将来的に認知症リスクがあることが分かりました」と小野教授。「健診で測定した空腹時血糖やHbA1cが糖尿病のレベルでなくても、食生活の工夫や運動習慣で検査値を良くするようにしましょう」と呼び掛ける。(メディカルトリビューン=時事)

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 金沢大学大学院医薬保健学総合研究科 〒920―8640 金沢市宝町13の1 電話076(265)2100

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