画像で効果見定めて治療―がんの「セラノスティクス」

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 画像診断と治療を組み合わせた「セラノスティクス」と呼ばれる医療技術が、がんの診療に広がりつつある。いち早く専門施設を開設した藤田医科大学病院(愛知県豊明市)の白木良一病院長(泌尿器科)に話を聞いた。

▽画像診断と薬で

 セラノスティクスは、英語で治療を表す「セラピューティクス」と、診断という意味の「ダイアグノスティクス」を合わせた造語。診断、治療それぞれに適したエネルギーと照射距離の放射線を放出する医薬品(RI)を使う。投与すると、がんなどの病変部に集まるように作られている。

 まず診断目的の医薬品を投与する。薬が体内で放出する放射線を画像診断装置で捉えると、線量に応じて病巣が写し出され、病変部に薬が届いた証しとなる。後日、治療用の放射性医薬品を投与し、がん細胞を死滅させる。

 薬は血流に乗って全身を巡るので、散らばった小さながん、体の深部にあるがんなど手術が難しい場合にも使える。

 「セラノスティクス向けの放射性医薬品は病巣に集積して作用し、周囲の正常細胞への影響は抑えられるため、従来の薬物治療より副作用が低いと期待されます。効かないとみられれば、他の有望な治療を探すことができ、患者さんに合った治療選択にもつながります」

▽専門施設も

 既に幾つか承認され、腫瘍の一種「神経内分泌腫瘍」などが対象となる。

 医療の放射線利用に関する規制で、放射性医薬品を使用する施設では線量管理、遮蔽(しゃへい)・防護、排気・排水などに対策が必要だ。また、放射性医薬品は効能が担保される期間が短く、業者から納品された後、長期保存できない。

 藤田医大病院は昨年、「セラノスティクスセンター」を開設し、診断、治療と排水処理などを一棟で行う体制を整えた。診断用の医薬品を自前で合成、製造することも可能だという。

 「使用期限が短い放射性医薬品を、効率よく患者さんに投与できます。セラノスティクスは前立腺がん、脳腫瘍などにも応用が検討されています」と白木病院長は語る。(メディカルトリビューン=時事)

   ◇   ◇

 藤田医科大学病院の所在地 〒470―1192 愛知県豊明市沓掛町田楽ケ窪1の98 電話0562(93)2111(代表)

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