近年の研究の結果、腸内細菌は便秘改善や大腸がんの予防だけでなく、生活習慣病などにも深く関わることが分かっている。京都府立医科大大学院医学研究科(京都市)の内藤裕二教授に、腸内細菌の働きをよくする「腸活」について聞いた。 ▽五つある腸内細菌タイプ 腸内細菌が集まった状態を腸内細菌叢(そう)と呼ぶ。生まれる前は無菌状態で、産道を通るときに母親の腸内細菌を取り入れ、誕生後に母乳や食事、生活環境によって常在菌として定着する。3歳までに腸内細菌の数や種類が決まるという。 3歳以降では腸内細菌は常在菌にならないが、「その後の食事や生活環境によって腸内細菌叢のバランスは変えられます」。 影響が大きいのが食事で、豚肉や牛肉などの動物性脂肪や砂糖、塩分の取り過ぎは腸内細菌叢を乱す要因となる。ストレスや喫煙も悪影響を及ぼす。 腸内細菌は食事内容で〔1〕高たんぱく・高脂質〔2〕バランスが取れている〔3〕炭水化物が多め〔4〕高たんぱく・高脂質・砂糖が多い〔5〕野菜や魚が多い―の五つのタイプに分類される。〔2〕が全体の52%と最多で、次いで〔5〕が22%で、ともに病気リスクが少ない。〔1〕は心臓病や脂質異常症、糖尿病などのリスクが高く、〔4〕は消化器の病気リスクが高い。〔3〕は摂取する栄養素に偏りがある。 ただ、これらのタイプは変化しやすく、食生活や生活習慣の改善で変えることも可能だ。 ▽食物繊維量を多く 腸内細菌数は40兆~100兆個、種類は1000以上あるとされ、健康な人の腸内細菌叢には有用な菌も悪影響を及ぼす菌もある。それらのバランスが保たれていることが重要で、菌の数や種類は多い方がよい。 腸活のこつは、腸内細菌の餌となる食物繊維を多く取ること。食物繊維の分類の一つには、水溶性と水に溶けない不溶性がある。今は「腸内細菌が食物繊維を取り入れて代謝物を作る発酵が着目され、『発酵性食物繊維』が重要と言われています」。 また、腸内細菌が作る短鎖脂肪酸には、腸内を酸化して有害な菌の増殖を抑えたり、異物の侵入を阻止したりして腸内バリア機能を保つ働きなどがあるという。 「発酵性食物繊維には、玄米、オーツ麦などの穀類、ゴボウなどの野菜、大豆や黒豆などの豆類があります。10歳以上では1日25グラム以上は食べてほしい」と内藤教授は話す。(メディカルトリビューン=時事) ◇ ◇ 京都府立医科大の所在地 〒602―8566 京都市上京区河原町通広小路上る梶井町465