薬剤関連顎骨壊死―歯科受診で予防を

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 薬剤関連顎骨壊死(えし)「MRONJ=ムロンジェイ」は、特定の薬剤で顎の骨が壊死を起こす疾患だ。歯科と医科が連携し、早期発見、早期治療することが必要になる。日本歯科大新潟病院(新潟市)口腔(こうくう)外科の小林英三郎准教授は「自分が服用している薬を把握し、定期的な歯科検診で予防に努めてほしい」と強調する。

▽特定の薬で発症

 MRONJは、緻密骨と呼ばれる硬い骨が多い下顎に発症することが多い。口腔内に壊死を起こした顎の骨が露出し、感染を起こして痛みや腫れを伴い徐々に進行する。

 原因は特定の薬剤だ。骨粗しょう症の治療薬として使われる、骨吸収抑制剤のビスホスホネートやデノスマブ、骨形成促進作用も併せ持つロモソズマブ、がんの治療で使用される血管新生阻害薬のベバシズマブ、スニチニブ、免疫抑制剤のメトトレキサートなどだ。ビスホスホネートやデノスマブには注射薬もあり、さらに効果が強い高用量タイプもある。

 なぜ、これらの薬剤がMRONJを発症させるのか。「一つには、薬剤が骨のリモデリング(再構築)を阻害するためだと言われています」。骨は吸収と形成を繰り返して再構築されるが、薬剤の作用がこのバランスを崩すことがあり、新しい骨に置き換わる前に骨細胞が寿命を迎え、壊死を起こしてしまうという。

▽口腔内環境を整える

 MRONJの主な治療は、壊死した顎骨を切除する手術だ。しかし、進行していると切除範囲が広くなり体にも影響が出る。「食事をかんだり飲み込んだりすることに影響を及ぼす恐れもあるので、予防を含め早期発見が不可欠です」

 MRONJは比較的新しい疾患のため、治療法や対策は日進月歩だ。かつて、虫歯や歯周病による抜歯やインプラントの埋め込みがリスクと考えられていたが、近年では「放置している虫歯や歯周病などによる歯根や歯茎の炎症がリスク」とされている。「薬剤の服用開始前に虫歯や歯周病を治療し、入れ歯が合っているかも調べ、口腔内の衛生環境を整えておくことや、服薬開始後も定期的な歯科受診をすることが予防につながります」

 MRONJの発症頻度は、一般的な骨粗しょう症の服薬では1%以下と考えられている。小林准教授は「過度な心配は必要ありませんが、骨粗しょう症の注射薬はお薬手帳に記載されないこともあるので、歯科受診時に必ず医師に告げてください」と呼び掛けている。(メディカルトリビューン=時事)

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 日本歯科大新潟病院の所在地 〒951―8580 新潟市中央区浜浦町1の8 電話025(267)1500

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