心臓に二つあるはずの「心室」が一つしか使えない単心室症。生まれつきの病気で、心不全などで命を落とす恐れがある。岡山大病院(岡山市)新医療研究開発センター再生医療部の王英正教授らのグループは、患者の心臓から採取した幹細胞を増やして移植すると、外科手術後の経過が良くなることを明らかにした。 ▽本人の心臓から採取 心室とは心臓の下側にある部屋で、血液を心臓の外に送り出すポンプの役割をする。単心室症は、約1万人に1人の頻度で起こる。治療として、血液の流れを整える手術を生まれた直後から数回に分けて行い、一つの心室で全身に血液を送るようにする。そうすれば、心不全による死亡を回避できる。 ただ、「こうした心臓手術を受けても、不整脈などの合併症が起きたり、心不全を繰り返したりするなどして、日常生活が制限される場合があります」と王教授。心不全死や心臓移植を回避できるのは、術後6年間で6割程度にとどまる。 心臓移植という手段もあるが、長期間の待機を余儀なくされるのが現実だ。 ▽8年以上続く効果も 幹細胞は、細胞の損傷や喪失を修復、再生する能力を持つ。王教授らは心臓手術時に採取した幹細胞を体外で培養し、カテーテルで戻す「細胞治療」を開発。岡山大病院など8施設で2011年~15年に手術した93人のうち、細胞治療を受けた40人と、心臓手術だけの53人の経過を8年間追跡した。 その結果、細胞治療のグループでは、心不全の発症が抑えられ、合併症の発生も低かった。生存率も、治療実施から4年目までは細胞治療グループの方が高かった。特に心臓の機能が低下した患者で、同グループの生存率が8年以上にわたり優れていた。 細胞治療の長期の効果を示したのは世界で初めて。この背景として、王教授は▽子どもは体重が軽く、必要な細胞数が少ない▽細胞の状態が良く、移植後に心筋細胞に成熟する能力が高い▽体全体の機能も良く、移植した細胞の生着(心臓に定着し、新たな心筋細胞を作り出すこと)が良い―ことを挙げる。 王教授は「心臓移植の待機中に細胞治療を行い、心臓の機能を高めて移植を待つこともできます」と述べる。現在、技術指導先の企業が保険適用に向けて最終段階の臨床試験を行っている。(メディカルトリビューン=時事) ◇ ◇ 岡山大病院の所在地 〒700―8558 岡山市北区鹿田町2の5の1 電話086(223)7151(代表)