登山人気の陰で、遭難事故は例年3千件前後発生している。山でのけがや病気を診る山岳医療専門医であり、自身もエベレストをはじめ国内外の最高峰に登頂してきた、山岳医療救助機構(札幌市)代表の大城和恵医師に、特に注意が必要な中高年層の登山について聞いた。 ▽無理のない計画を 心身のリフレッシュ、持久力やバランス感覚の向上、ストレス軽減、生活習慣病の予防と改善効果など、登山では多くのメリットが期待できる。 一方、「特に下山中に転倒して滑落するなど大きなけがにつながるケースが多く、注意が必要」と大城医師は話す。遭難原因を集計した警察庁データでも、道迷いに次いで転倒と滑落が多い。「私たちの調査では、登山中の死因は外傷が最多を占め、次いで低体温症、心臓発作でした。心臓死は41歳以上に発生し、93%が男性でした」 こうした病気の背景には、糖尿病や高血圧などの持病、喫煙習慣、運動や睡眠不足などがある。加えて、大城医師は、自分の体力に見合わない無理な登山計画を指摘する。 「自分の体力を過信して、登り切れずに疲れて動けなくなるケースが目立ちます。特にこれからの季節、山の秋は平地よりも早くやってきます。汗でぬれた衣服は、気温の低下とともに体温を奪い、低体温症のリスクにつながります」 ▽低山ハイキングから 登山中のけがや病気のリスクを少しでも下げるには、どうすればよいのか。「山の体力は山で鍛えるもの。登山で使う筋力は平地とは異なります。階段の上り下りで鍛えようとするなら、何百回も往復する必要があります」 大城医師がお勧めするのは、週1、2回の低山ハイキングだ。「標高200メートル程度の山を登り、徐々に体力がついてきたら少しずつ高い山を登るとよいでしょう」 事前の検診も重要だ。大城医師は、登山者向けの検診や治療、登山前相談を行う登山外来を、札幌孝仁会記念病院=札幌市、電話011(665)0020=と日本大病院=東京都千代田区、電話03(3293)1711=に開設した。オンラインによる医療相談も受け付けている。 「持病があって不安な人や40代以降の中高年、疲れやすさの要因が体力か病気かを見極めたい人などはご相談ください。持病がある人は、かかりつけ医の紹介状があるとスムーズです。安全な登山には、ご自身の健康状態を正しく評価することが大切です」と大城医師はアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事)