スポーツ選手や演奏家らにとって、体が常に思い通りに正確に動かせるか否か、その精度はパフォーマンスに影響する。東北大産学連携機構(仙台市)イノベーション戦略推進センターの永富良一特任教授らの研究グループは、関節の動きの正確性が楽しい曲を聴くときに低下し、悲しい曲で高まることを明らかにした。 ▽足首関節の動きを評価 関節の正確な制御は、訓練を繰り返すことで得られるが、「試合などの場面でミスしてしまうこともある。精神的な緊張や気持ちの揺らぎが影響すると推測されます」と永富特任教授。 感情がパフォーマンスを左右することは古くから知られていたが、関節角度の調節にどのように関係するかはこれまで明らかではなかった。そこで研究グループは、感情が足関節(足首)の動きの精度にどう影響するかを、足関節の角度の計測システムを用いて検討した。 研究には若者20人が参加。クラシック音楽の中から、それぞれが楽しいと感じる曲、悲しいと感じる曲、どちらでもない曲を選択。3種類を聴く、あるいは聴かずに、足関節角度を指示通りに繰り返し動かすテストを受けた。 ▽楽しい気持ちも大事だが 調査を分析した結果、指示された足関節の角度と実際の誤差は、楽しく感じる曲を聴くときが最も大きく、悲しい曲が最も小さかった。どの曲も聴いていないときの誤差は、どちらでもない曲を聴くときとほぼ同等だった。 その理由について、永富特任教授は「関節角度の調節は、体の各部の位置、角度、速度などを正確に動かすときに必要な『固有知覚』という感覚に基づき、それが神経線維を介して脳に伝わって行われます。固有知覚が伝わる神経線維の活動が、悲しい気持ちのときは安定し、楽しいときは不安定になることが報告されています」。ただ、なぜ安定するかは不明で、さらに研究を続けるという。 また、「楽しいという気持ちは、運動の動機付けとしては重要です。しかし、正確なパフォーマンスが求められる場面では、楽しいという気持ちより、冷静に近い、悲しい気持ちの方が有益かもしれません」と話している。(メディカルトリビューン=時事) ◇ ◇ 東北大産学連携機構の所在地 〒980―8579 仙台市青葉区荒巻青葉6の6の10 未来科学技術共同研究センター2階 電話022(752)2186