"適切なタイミングでのインスリン治療 の開始"って何?

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β細胞が元気を取り戻せば糖尿病の薬物治療を中止できることも

 こうしたインスリン製剤を使った治療を適切なタイミングで始めると、なぜ薬物治療を中止できるのでしょうか。それを説明するのが「糖毒性」という言葉です。

 高血糖が長年続いた患者さんの体では、インスリンの「分泌不足」と「作用障害」の両方がみられます。インスリンが足りず血糖値が高い状態が続いていると、全身の細胞に対するインスリンの働きまで低下し、さらに血糖値は高くなります。この両者がさらなる悪循環(糖毒性)を招いてしまうのです。

 しかし、治療で高血糖の状況を正常な状態に戻すことができれば、悪循環を断ち切ることができます(これを「糖毒性の解除」といいます)。β細胞にまだ元気があるうちに悪循環を断ち切って休養を与えてインスリン分泌を回復させ、さらに血糖値が低下してきて全身の細胞がインスリンに反応する力を取り戻すと、インスリンの効果が高まるのです。こうなれば、インスリン注射療法を中止したり、経口薬を減らしたりすることもできるようになります。

 この治療を行う上で重要なのが、開始するタイミング。β細胞に元気が残っているうちに始めることが大切です。インスリン療法を行えば、血糖値のコントロールは可能です。しかし、β細胞機能を回復させることを目標にする際には、今まで考えられていたような"インスリンは最後の手段"ではない、的確な時期に開始する必要があることを理解すべきでしょう。

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