肥満と代謝異常の有無などの組み合わせで、「なりやすいがん」が異なる―。このような研究結果を徳島大大学院(徳島市)医歯薬学研究部予防医学分野の渡辺毅助教らがまとめた。 ▽5万人を9年追跡 肥満の程度はわずかでも、不調や疾患につながりやすい。がんとの関連も指摘されている。一方で、肥満だけど健康な人、肥満ではないが不健康な人もいる。 渡辺助教らの研究グループは、11の研究機関が生活習慣や病気の発生を観察する5万3042人の大規模集団について、約9年間追跡した。開始時に対象者の肥満度、血圧、コレステロール値、血糖値、飲酒、喫煙などについて調べた。 その際、高血圧、脂質異常、高血糖のいずれかに異常があれば「代謝的に不健康」とした。その有無と肥満の有無を組み合わせて、参加者を代謝的に〔1〕健康な正常体重〔2〕不健康な正常体重〔3〕健康な肥満〔4〕不健康な肥満―に分類した。 ▽肝臓がんや大腸がんのリスク増 追跡期間中に4467人(男性2423人、女性2044人)ががんになった。年齢や性別などのばらつきを調整して解析すると、代謝的に不健康な肥満では、健康な正常体重の人と比べてがんのリスクが1.15倍高かった。 さらに、代謝的に「健康な肥満」と「不健康な肥満」は、肝臓がんが約2.4倍、大腸がんが約1.4~1.5倍リスクが高かった。 女性では、代謝的に「健康な肥満」は乳がんになりやすいが、代謝の不健康が加わるとリスクがより高まった。また、代謝的に「不健康な肥満」では子宮体がんのリスクが約2倍だった。 一方、代謝的に不健康な正常体重の膵臓(すいぞう)がんのリスクは健康な正常体重に比べ約1.6倍で、正常体重でもリスクがあることが分かった。 この結果について、渡辺助教は「一人ひとりのがん対策を考える材料になる」とみる。(メディカルトリビューン=時事) ◇ ◇ 徳島大大学院医歯薬学研究部の所在地 〒770―8503 徳島市蔵本町3の18の15 電話088(633)9116