うつ病、不安症などの治療法の一つとして、有効とされる認知行動療法。最近は、スマホやパソコンで受けられるオンライン認知行動療法も始まっている。千葉大付属病院(千葉市)認知行動療法センターの清水栄司教授(センター長)、同大子どものこころの発達教育研究センターの勝嶋雅之特任研究員らのグループは、通常診療にオンライン認知行動療法を加えると統合失調症に有効であることを明らかにした。 ▽通院難しい人も可能 認知行動療法について、勝嶋研究員は「考え方(認知)とそれに伴う行動に対して働き掛けていく心理療法。考え方や行動におけるストレスや不安を軽減して生活が良い循環になるように、患者と一緒に考えながら、より良い方法を探していきます」と説明する。 日本でも近年、認知行動療法を希望する人は少なくないという。ただ、「実践する医療スタッフの数が十分とは言えず、実施医療機関も多くありません。精神疾患を抱えると、外出することに負担感があり、通院をためらいがちな人もいます。認知行動療法を行う施設が自宅から遠い場所だと、なおさら受けることが難しくなります」と勝嶋研究員は指摘する。 ▽8週間で重症度が改善 そこで期待されるのが、自宅で受けられるオンライン認知行動療法だ。これまで、不安症、うつ病、慢性疼痛などの臨床試験で、マンツーマンでのオンライン認知行動療法の有効性が確認されているが、統合失調症に関しては、世界的にも臨床試験は行われていなかった。 統合失調症は、およそ100人に1人が発症するといわれる。「自分への否定的な声が聴こえるなどの幻聴や、意欲が低下して引きこもりがちになったり感情が平板化したりするなどの症状が表れ、生活に支障を来す病気です」(勝嶋研究員)。 清水教授ら研究グループは、統合失調症の患者24人について、通常治療のみのグループと、通常治療にオンライン認知行動療法を加えたグループに分け、8週間後の症状の重症度指標(0~210点で、点数が高いほど重症)を比べた。 その結果、オンライン療法を追加したグループは、試験開始時の平均52点から8週後には同43点まで改善。通常治療グループと有意な差があった。 「オンライン療法の活用により認知行動療法の普及が進み、新たな治療選択肢として多くの患者が受けられるようになることを望んでいます」と清水教授は語る。(メディカルトリビューン=時事) ◇ ◇ 千葉大学付属病院の所在地 〒260―8677 千葉市中央区亥鼻1の8の1 電話043(222)7171(代表)