温暖化などの気候変動は人の健康にも悪影響を及ぼすとされる。東京科学大大学院医歯学総合研究科(東京都文京区)公衆衛生学分野の那波伸敏准教授らは、子どもが高温にさらされると、免疫性血小板減少性紫斑(しはん)病(ITP)の発症のリスクが高まることを明らかにした。 ▽出血しやすく ITPは、出血を止める働きを担う血小板という血液成分が、自身の免疫の誤作動によって攻撃される病気。血小板が減少すると出血しやすくなり、あざもできやすくなる。子どもでは、10万人当たり年間2~7人が発症し、0~7歳に多い。6カ月~1年以内に治るケースが多いが、約20~25%の患者は慢性化する。 代表的な誘因はウイルス感染で、感染後1~4週間で発症することが多い。那波准教授によると、ITPで入院する子どもは春から初夏が多いとの報告もあるという。ただ、環境要因については解明が進んでいない。 ▽高温で入院増 そこで研究グループは、2011~22年の5~9月の全国規模の入院データと、気象庁発表の日々の気温データを突き合わせた。分析の結果、1日の平均気温が30.7度の極端な暑熱にさらされると、15歳未満の子どもがITPで入院するリスクが高まっていた。 「発症リスクであるウイルス感染に高温が加わることで、免疫の誤作動がより過剰になるのではないか。つまり、ITPの発症準備が進んでいる状態で、暑さが最後の一押しをする可能性があります」と那波准教授。 「気候変動が自然災害や食糧危機ばかりでなく、健康にも影響を与える可能性が調査結果で示されました。気候変動を『自分ごと』として捉えるきっかけになってほしい」 ただし、関連性が明らかになった気温(30.7度)は研究期間中の1日ごとの平均気温の上位1%に該当するほどの高いこと、ITPのリスクが上昇しても、必ず発症するという意味ではないことから、那波准教授は「過度に行動を制限する必要はない」とアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事) ◇ ◇ 東京科学大大学院医歯学総合研究科の所在地 〒113―8510 東京都文京区湯島1の5の45 電話03(5803)5009(代表)