長期記憶の能力、高精度で計測ースマホアプリを開発

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 加齢とともに低下する記憶力。特に出来事に関する長期記憶(エピソード記憶)の能力が低下することが多い。富山大(富山市)学術研究部工学系の田端俊英教授らの研究グループはエピソード記憶の能力を簡単に検査し、有効な対策を提案するスマートフォンアプリを開発したと発表した。

▽社会全体の損失も

 記憶には、数秒程度覚えている短期記憶と、数分~数時間、あるいは数年以上覚えている長期記憶がある。長期記憶のうち、エピソード記憶とは「例えばきのう、家族でラーメンを食べたといった記憶です」。

 人間の高度な認知機能を支える能力で、「勉強して覚えた知識のような長期記憶は、いったんエピソード記憶として覚え、その中から精製して固定化したものです。つまり、全ての長期記憶の入り口になります」。

 エピソード記憶の能力が衰えると、生活の質は低下する。さらに、「社会全体の損失にもなります。デジタル化などの技術進歩が著しい現代で、エピソード記憶能力が低下すると就労が難しくなります」。

 そのため、田端教授は、記憶能力低下を押しとどめる方法として、「軽く汗ばむくらいの有酸素運動が有効なことが多くの研究で分かっています」と説明。

▽記憶スコアを算出

 記憶能力の検査は、さまざま方法で行われてきた。しかし「重症になってからでないと分からなかったり、手間や時間がかかったりするため、低下に気付くのが遅れてしまいます。また、エピソード記憶能力の低下は、認知機能障害や認知症をごく初期のうちに捉える指標としても重要です」。そこで、従来の検査法の原理を応用し、誰でもどこでもいつでも高い精度で計測できるスマホアプリを開発した。

 アプリを起動すると、スマホ画面に多くの画像が提示される。一定時間経過後に画像をどの程度記憶しているかが自動計測され、記憶スコアを算出。使っている人がエピソード記憶能力の改善が必要と感じたら、最適なレベルの有酸素運動を提案させることもできる。

 実際に若年者と高齢者に使ってもらったところ、高齢グループの記憶スコアは若年のほぼ半分まで低下していた。「アプリを使うことで、記憶など認知機能の低下について、若い人にも危機感を持ってもらいたいです」と田端教授。今後、製品化に向けた研究を進める予定だ。(メディカルトリビューン=時事)

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 富山大学術研究部工学系の所在地 〒930―8555 富山市五福3190 電話076(445)6028(広報・基金室)

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