コロナ下で増加ー若者の神経性痩せ症

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 太っていないのに、痩せたいと感じるようになり、食事を極端に制限する神経性痩せ症。東邦大医学部(東京都大田区)精神神経医学講座の根本隆洋教授や福屋吉史助教らは、若者の神経性痩せ症患者が新型コロナウイルス感染症の流行後、増加に転じたことを明らかにした。

▽早期に適切な治療を

 神経性痩せ症は「拒食症」と呼ばれることもある。食べないだけでなく、大量に食べた後に喉に手を入れて吐いたり、下剤を飲んで便で出したりすることを繰り返す病型もある。

 「栄養不足で体重が極端に減ります。本人の自覚が乏しいのですが、低体重や低栄養で二次的に低体温、低血圧、不整脈、免疫力低下による感染症などの身体疾患を伴ってきます。不安、うつなどの精神症状も少なくありません」と根本教授。

 思春期に発症することが多く、「家族や学校、社会など、全ての環境要因が発症に関わる可能性があります。患者はまじめで完璧主義だったり、不安を感じやすかったりする人でリスクが高いとされます」と福屋助教は説明する。

▽コロナ前の1.4倍に

 根本教授らは、神経性痩せ症と診断された7~19歳の患者数の2017~22年の推移を調査。新型コロナ流行に伴う全国的な臨時休校が始まった20年3月までを「流行前」、臨時休校が終了した20年5月以降を「流行後」とし、1カ月当たりの患者数を流行前後で比較した。

 その結果、コロナ前は患者数が減少傾向にあったが、流行後は増加に転じ、流行前の約1.4倍に増加。女性よりも男性の増加率が高く、15~19歳よりも7~14歳で約1.5倍増えた。

 コロナ後に若年者で神経性痩せ症が増えたことが欧米で報告されているが、今回、日本でも同じ結果が得られた。そのため、「異なる社会文化的な要因よりも、コロナ下での生活様式の急激な変化に伴う、心理状態や家族、友人らとの関係性の変化が発症に影響したと考えられます」。

 今後、メンタルヘルス面での予防策の確立が望まれるが、根本教授は「患者は病状が進まないうちに治療を受けてほしい。それが良好な経過を得る鍵になります」と話している。(メディカルトリビューン=時事)

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 東邦大医学部の所在地 〒143―8540 東京都大田区大森西5の21の16 電話03(3762)4151

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