増加にウイルス関連かー中咽頭がん

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 飲み込みや構音(言葉の発音の過程)に関わる重要な部位を侵す中咽頭がん。この数十年で増加しており、名古屋市立大病院(名古屋市)耳鼻咽喉科の川北大介准教授は「ウイルス感染が関わっている可能性がある」とみる。

▽半数に「HPV」

 中咽頭がんは、喉やその入り口付近(舌の根、へんとう、口の奥の横)にできる。症状には喉の違和感、長く続く痛み、飲み込みにくさなどがある。

 原因として喫煙や大量飲酒が以前から知られているが、どちらの習慣もない人で近年、ヒトパピローマウイルス(HPV)が浮上している。中咽頭がんの半数以上がHPV関連と見られている。

 HPVは、ありふれたウイルスで、性交時に子宮や陰茎、喉の微小な傷から侵入する。通常は免疫の働きで排除されるが、手ごわい「高リスクHPV」は数年以上居座り、ごく一部の人にがんを発生させる。

 川北准教授らが全国19の「地域がん登録」(がん患者の診断、生存に関する情報を収集する制度)を調べた研究では、中咽頭がんの年間発生率は2015年時点で男性が人口10万人当たり1.9人、女性が0.4人と比較的低いものの、1993年から増加傾向にある。「原因は特定されていませんが、オーラルセックスなど、性行為の多様化も関わると考えられます」

▽ワクチンに期待

 中咽頭がんの予防策の一つに、高リスクHPVの感染を防ぐワクチンが期待されている。子宮頸(けい)がんの予防を目的に2009年に発売された。副反応やその疑いが問題となって接種が停滞したが、同じような症状はワクチン非接種者でも表れることが分かり、小学校6年生~高校1年生の女子への積極的な接種勧奨が22年に再開された。

 川北准教授によると、中咽頭がんの予防効果については、がん発生までに子宮頸がんよりも長い期間がかかることなどから、まだ解明されていない。海外ではワクチン接種による口の中のHPV保有率の減少や発がん抑制のシミュレーションに基づき、男女が接種する目的として認めている国もある。川北准教授は「国内の対応が注目される」と話す。(メディカルトリビューン=時事)

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 名古屋市立大病院の所在地 〒467―8602 名古屋市瑞穂区瑞穂町川澄1 電話052(851)5511

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