特殊な胃カメラで早期発見―難治性の膵臓がん

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 大阪大大学院医学系研究科(大阪府吹田市)がんゲノム情報学の谷内田真一教授らは、特殊な胃カメラを使って、膵臓(すいぞう)がんを早期発見できる検査方法を開発した。

▽5年生存率10%

 膵臓がんは、5年生存率が10%程度。谷内田教授は「患者の約8割が、手術ができない遠隔転移の段階で診断されるためです。膵臓は胃の裏側にあり、画像検査でぼんやりとしか見えません」と説明する。

 膵臓がんの90%以上には、KRAS(ケーラス)という遺伝子に変異があり、がんの存在を示す目印になる。ただし、これまでの血液から遺伝子変異を検出する手法では、「全身に転移した場合でしか検出できない」という課題がある。

▽遺伝子変異を検出

 そこで谷内田教授は、胃カメラを応用することを考えた。胃カメラは、2年に1回の胃がん検診の実施が推奨されていることや、十二指腸の「乳頭部」を観察することが、早期発見につながると考えた。

 「十二指腸乳頭部は、膵臓の分泌液が通る管の出口に当たる。膵臓がんがあれば、その付近でKRAS変異が検出できるのではないか」

 まず膵液の分泌を促すセクレチンという薬を注射した後、特殊な胃カメラを口から入れる。乳頭部まで進めたら、カメラの管に通した専用カテーテルから生理食塩水を出して洗い、その後の液体を回収。回収液中のKRAS変異数を検査施設で調べる。

 膵臓がん患者89人と健康な75人で検討すると、80.9%の確率で、膵臓がんを正しく診断できた。また、膵臓がんのない人は、全員ががんでないと判定できた。

 検査の対象は「家族に膵臓がんがいる人や糖尿病、慢性膵炎、肥満、喫煙・大量飲酒の習慣がある人など、高リスクの人」を想定する。

 実用化への課題はセクレチンが国内で製造販売されていないことで、谷内田教授は製薬企業に製造を働き掛けているという。(メディカルトリビューン=時事)

   ◇   ◇

 大阪大大学院医学系研究科の所在地 〒565―0871 大阪府吹田市山田丘2の2 電話06(6879)5111

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