立ちくらみにも注意―若年者のコロナ後遺症

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 新型コロナウイルス感染症に罹患(りかん)後、感染から回復し他に明らかな原因がないにもかかわらず、2~3カ月以上長引く症状全般を「新型コロナウイルス罹患(りかん)後症状」(コロナ後遺症)という。

 岡山大病院(岡山市)総合内科・総合診療科の大塚文男教授は「コロナ後遺症は、疲労感や頭痛など本人にしか分からない症状が多いため、周囲から認識されにくい。立ちくらみ症状も、特に10代の若年者のコロナ後遺症として注意すべき症状です」と呼び掛ける。

▽起立時に心拍数上昇

 2021年2月~25年3月に、大塚教授らが携わるコロナ後遺症外来を受診した患者は1100人超に上る。年代別では30~50代が約6割と最も多く、10代も15%近くを占める。

 「10代のコロナ後遺症は、倦怠(けんたい)感、頭痛、睡眠障害の順に多く、学生では約半数が学校に行けないほど強い症状でした。朝なかなか起きられない、立ち上がるとふらつきやめまいが起こる立ちくらみ症状も特徴的です」

 立ちくらみ症状を訴えるコロナ後遺症患者86人中33人は起立性調節障害と診断され、このうち16人は10代だった。起立時に血圧低下はなく、心拍数が急上昇し、動悸(どうき)や吐き気を伴う体位性頻脈というタイプが多かった。「起立性調節障害は、循環血流量や血圧などを調節する自律神経の機能低下が原因とされ、成長ホルモンの分泌低下とも関係があります。思春期前後に多く見られ、コロナ罹患後に発症するケースもあるようです」

▽半年で7割は回復

 起立性調節障害は、身体的な原因以外に、心理的ストレスやホルモンバランスの乱れ、水分や電解質、栄養の不足も発症に関係するとされる。「単に疲れや気分の問題と軽視せず、症状に悩んでいる場合は総合診療科などを受診し、症状の改善を図ることが大切です」

 治療は、生活環境の整備や内服薬が中心になる。「保護者とも相談して休息を取りながら生活リズムや食生活を少しずつ整えます。学校生活では症状を軽減できるよう配慮(長時間の起立を避けるなど)を求めるとよいでしょう」

 「血圧や心拍数を調節する薬や漢方薬を使う場合や、心の不調のため精神科神経科と連携して診療する場合もあります」。10代の後遺症患者の約7割は受診から半年程度で回復するが、約3割はその後も症状が残っているという。

 大塚教授は「コロナ後遺症は成長や重要なライフイベントを左右する可能性もあります。自分と周囲の人を守るためにめりはりのある感染症対策を続けてほしい」と助言している。(メディカルトリビューン=時事)

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 岡山大病院の所在地 〒700―8558 岡山市北区鹿田町2の5の1 電話086(223)7151(代)

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