高齢者が寒がる理由―体温調節機能が関係

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 高齢者は夏場でも暑さを感じにくく、つい厚着をしてしまいがち。厚着で体内に熱がこもれば熱中症リスクにもなる。早稲田大人間科学学術院(埼玉県所沢市)の永島計名誉教授に、加齢に伴う体温調節機能低下について聞いた。

▽体温約0.2度低い

 人体には、暑いときには体内の熱を放出し、寒いときには体内の熱を逃さないようにして、さらに熱を作り出す(熱産生)体温調節機能が備わっている。

 「一般に、高齢者では体温調節機能が低下します。10~50歳の人に比べ、65歳以上の高齢者では体温が平均0.2度程度低いことも分かっています」と永島名誉教授は説明する。

 加齢により、暑いときに汗腺が汗を分泌するタイミングが遅れたり、分泌できる汗の量も減少したりする。また、動脈硬化により皮膚血管への血流調節が滞り、皮膚への血流増加が起こりにくくなる。この結果、皮膚表面の温度はあまり上昇せず、暑さを感じにくくなる。

 冬場など寒い環境下では、加齢に伴い筋肉量が減少することで熱産生量が減るとともに、筋肉そのものによる断熱効果も低下するのが問題だ。

 加齢に伴う体温調節機能の低下は避けられない。「個人差はあるものの、運動習慣がある高齢者でも若い世代と比べれば体温調節に関わる発汗機能は低下する傾向にあります。しかし、運動習慣がない高齢者より、ある高齢者では発汗機能は改善されることも分かっています」

▽気温に合った服選び

 体温調節機能の維持を目指すには、有酸素運動による発汗機能の改善、筋力トレーニングによる熱産生機能の向上の両方が必要である。

 食事も重要だ。「食事を取るときに消費されるエネルギーにより代謝量が増え、一部は直ちに熱となります」。タンパク質を多めに摂取したり、熱の産生につながる唐辛子やショウガなどの香辛料の利用を心掛けたりするとよい。

 「毎日の衣服選びも大切です。あまり主観に頼りすぎず、天気予報などを参考にしながら気温に合わせた衣服を身に着けましょう。これからの季節は熱中症対策として、小まめな水分補給や、室温28度以下を目安としたエアコンの使用、暑さ指数(WBGT)を測る測定器の活用を」

 また、家族や介護者に対しては、「高齢者は体温調節機能が低下していること、暑さに対して適切な行動を起こす判断能力も弱くなっている場合があることも理解してほしいです」と呼び掛けている。(メディカルトリビューン=時事)

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