がんは人生設計や生命予後に大きく関わり、患者本人だけでなく家族にも心理的負担や苦痛を及ぼすケースが少なくない。そうした苦悩に対応するのが精神腫瘍科だ。国立がん研究センター中央病院(東京都中央区)精神腫瘍科の松岡弘道科長に話を聞いた。 ▽よろず相談所 がんと診断されると、病気そのものによる痛みやつらさに加え、仕事や学業、家族や友人、知人、職場や学校との関係、将来についてなど、さまざまな不安や心配に悩むことがある。 「患者さんだけでなく、周りのご家族も大きなショックを受けることがあります。このような気持ちのつらさなどに対して、精神科医や心療内科医を中心に、心理療法士や看護師などがチームとしてケアを行うのが精神腫瘍科です」 不眠や抑うつ症状といった精神疾患の診断や治療だけでなく、主治医とのコミュニケーションの問題や治療に対する不安や悩みなど、がん患者が抱えるあらゆる困り事に各職種と連携して対応する「よろず相談所」だという。 精神疾患に至らなくても、同院の精神腫瘍科を受診する患者や家族は少なくない。年間2000件ほどの受診患者のうち半数前後は、精神疾患の診断には至らないケースだ。 「ご家族が落ち込んだりすることで、患者さんの適切なサポートに影響が出てしまうこともあります。ご家族は第二の患者さん。困り事があれば積極的にご相談ください」 ▽遺族ケアも 精神腫瘍科の対象は、がん患者と家族だけではないという。「当院では、ご遺族に対するケア(グリーフケア)を行っています。近年の遺族調査では約2割が何らかの心理的サポートを受けたいと答えており、その重要性がうかがえます」 ただし、現時点でがん医療を行うすべての医療機関に精神腫瘍科が設置されているわけではない。そこで松岡科長は、〔1〕受診する医療機関の緩和ケアチームか緩和ケア科への相談〔2〕日本サイコオンコロジー学会のホームページにある『登録精神腫瘍医』のリストの参照―の二つを提案する。 「がんに伴う心理的ストレスや医療者とのコミュニケーションの問題などに取り組むことは、がん治療の一部です。精神科はハードルが高いと思われがちですが、ささいなことでも困り事があれば、一人で抱え込まずに相談してください」と、松岡科長は呼び掛けている。(メディカルトリビューン=時事) ◇ ◇ 国立がん研究センター中央病院の所在地 〒104―0045 東京都中央区築地5の1の1 電話03(3542)2511(代表)