メニューを開く 検索

トップ »  医療ニュース »  2023年 »  臨床医学 »  世界初、NASH治療用アプリの効果確認

世界初、NASH治療用アプリの効果確認

2023年01月27日 05:05

495名の医師が参考になったと回答 

イメージ画像

 医師の管理下でスマートフォンのアプリなどを活用し、行動変容を促す治療アプローチとしてデジタル療法に対する関心が高まっている。海外では、2010年代以降に糖尿病などを対象とした治療用アプリが承認され始めた他、日本では2020年にニコチン依存症、2022年には高血圧の治療用アプリが承認されている。そうした中、東京大学病院検査部講師の佐藤雅哉氏らは非アルコール性脂肪肝炎(NASH)に対する治療用アプリの効果を多施設臨床試験で検証した結果、世界で初めて有効性が示されたとAm J Gastroenterol (2023年1月20日オンライン版)に発表した。(関連記事「初の禁煙治療用アプリが承認」「世界初の高血圧治療用アプリが販売開始」)。

個人に最適化された治療ガイダンスを提供

 NASHは肥満を背景に発症し、国内の患者数は200万人、予備軍は1,000万人以上と推定されている。現時点で確立された治療法はなく、各施設で減量を目的とした栄養や運動指導が行われるにとどまっている。また、治療に必要な専門知識を有する人材に限りがあることから、デジタル療法など持続可能なプラットフォームを利用した新たな介入法が望まれていた。

 そこで佐藤氏らは、医療ソフトウェア企業のCureAppと共同でNASH治療用アプリの研究開発を実施。アプリでは患者に毎日の体重記録や生活習慣を記録してもらい、患者ごとに最適化された治療ガイダンスを提供する。それにより認知と行動の変容を促し、減量へとつなげるのが狙いだ。また、これらの情報はアプリを介して医師側にも共有されるため、外来診療の限られた時間内でより効果的なサポートが可能になるという()。

図. NASH治療用アプリの概要

NASHアプリ概要図.png

(東京大学病院プレスリリースより)

NASや体重減少、線維化ステージが有意に改善

 佐藤氏らは、組織学的にNASHと診断された19例を対象にNASH治療用アプリを用いた探索的臨床試験を実施。主要評価項目は、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)からNASHと非NASHを鑑別するNAFLD activity score(NAS)の変化、副次評価項目は体重変化、線維化ステージの改善、肝線維化を伴わないNASの2点以上の改善とした。

 その結果、アプリを用いた48週間の介入により13例(68.4%)の患者でNASの改善が認められた(平均変化-2.05±1.96点、閾値を-0.7点とした場合のP<0.001)。介入終了時のベースラインからの平均体重減少は8.3%だった(P<0.001)。また、開始前に中等度以上の線維化を認めた患者の58.3%で線維化ステージの改善が認められた。肝線維化を伴わないNASの2点以上の改善は57.9%が達成した。

 同氏らは「われわれが開発したNASH治療用アプリは、NASHに対する有効性を世界で初めて示した。患者の認知と行動変容を通じた減量によりNASHが治療できれば、肝硬変や肝がんだけではく、肥満が危険因子である他疾患の予防につながることも期待される」と結論。その上で「今後はNASHに対する新医療機器としての薬事承認を目指し、第Ⅲ相試験の実施を検討している」と付言している。

植松玲奈

無料でいますぐ会員登録を行う

【医師限定】

初回登録で500円分のポイントをもれなく進呈!

(4月末迄/過去ご登録のある方を除く)

  • ・ ご利用無料、14.5万人の医師が利用
  • ・ 医学・医療の最新ニュースを毎日お届け
  • ・ ギフト券に交換可能なポイントプログラム
  • ・ 独自の特集・連載、学会レポートなど充実のコンテンツ

ワンクリックアンケート

グーグルマップに医療機関への不当な投稿問題、どう考える?

トップ »  医療ニュース »  2023年 »  臨床医学 »  世界初、NASH治療用アプリの効果確認