電子カルテAI要約の導入広がる、10~15分の作業が「5秒で終わる」...患者への説明も丁寧に〔読売新聞〕

  • Facebookでシェアする
  • Medical Tribune公式X Xでシェアする
  • Lineでシェアする
感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

 電子カルテに書き込む文書などを人工知能(AI)を使って要約するシステムの導入が、医療現場で広がっている。これまで医師らが時間をかけて患者に関する情報をまとめていた文書を即時に完成させる。患者へのより丁寧な説明や、転院先の医療機関へのスムーズな受診にもつながっているという。

1000か所以上の医療機関で導入

 兵庫医科大病院(兵庫県西宮市)は、専用のスマートフォンで録音した患者との会話を自動で文字に起こし、生成AIが約1000字に要約するシステムを昨年6月に導入した。要約された文章は、スマホの画面で2次元コードに変換される。専用の機器で読み取ると、電子カルテの端末に転送される仕組みだ。

 システムを開発した新興企業「medimo」(東京都)によると、2024年からこれまでに1000か所以上の医療機関で導入されているという。

 同病院の篠原 尚ひさし 副院長は「これまで患者1人の記入に10~15分かかっていた作業が、5秒で終わるようになった」と話す。篠原副院長によると、より正確な記録を残せるほか、医師が要約されることを意識して患者にわかりやすく説明することにもつながっているという。

退院情報も

 退院する患者の診療情報を簡潔にまとめた「退院サマリー(要約文書)」などを作成する富士通Japanのシステムもある。国立病院機構・名古屋医療センター(名古屋市)は昨年秋に本格導入し、退院後に患者が通う医療機関と退院サマリーを共有している。これまでは電子カルテに入力された膨大な診療の記録をもとに、医師が要約していたが、作成件数は年間約1万6000件に上り、負担となっていた。

 同センターによると、患者1人あたり平均28分かかっていた退院時の書類作成が、同8分に短縮され、今後、年間約5000万円以上の人件費の削減効果も期待されるという。

 同様のシステムを、大阪市の地域医療機能推進機構(JCHO)大阪病院も今年6月に導入する。退院サマリーや看護師の引き継ぎ文書の作成などに役立てる予定だ。西田俊朗院長は「負担を減らし、働きやすい職場にすることで、医師や看護師がより患者に向かい合うことに注力できる環境作りにつながる」と期待する。

医師の確認 不可欠

 患者に関する情報は、個人情報が多い上、システムが適切に要約できなかった場合は治療方針に悪影響を及ぼしかねないため、慎重な取り扱いが求められる。システムを効果的に使う一方で、医師による確認も不可欠だ。

 兵庫医科大病院では、電子カルテに取り込む要約文書を保存する際に、医師が改めて内容を確認する。システムは外部の端末に接続せず、病院内のネットワークだけで電子カルテに情報を送ることができ、外部への個人情報流出を防ぐ。

 JCHO大阪病院などのシステムを手がける富士通Japanは「生成AIが間違いをもっともらしい形にしてしまうリスクを減らすための実証実験を重ね、医療文書として求められる正確性や信頼性の向上を図っている」とする。

 厚生労働省はAIの活用が広がることを見据え、医療機関での安全管理指針を定めている。医療情報を電子システム上で取り扱う責任者の配置など体制を整備するよう求めている。

 黒田知宏・京都大教授(医療情報学)は「医療現場で導入が広がる背景には生成AIの性能が近年、格段に上昇していることがある」と指摘。「医師や看護師が書類を作成する負担は重い。その軽減は医療機関にとって重要で、導入の広がりは避けられない流れだ」と話す。

(2026年3月24日 読売新聞・長尾尚実、冨山優介)

ヨミドクター

  • Facebookでシェアする
  • Medical Tribune公式X Xでシェアする
  • Lineでシェアする