精神疾患の適性評価制度に反対!学会見解

日本精神神経学会:重要経済安保情報保護活用法を批判

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

 日本精神神経学会は昨日(5月15日)、「重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律における適性評価制度に対する見解」(以下、「見解」)を同学会の公式サイトに掲出した。「見解」は、昨年(2024年)5月10日に成立した「重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律(重要経済安保情報保護活用法)」における適正評価の調査事項に、「精神疾患に関する事項」が定められていることなどが精神疾患への誤解や偏見につながるとして、精神疾患に対する適性評価制度の導入に反対を表明している。(関連記事「注目される精神症の発症予防、早期介入は有効か」)

特定秘密保護法と同様の問題が解消されていない

 「見解」はまず、適性評価の調査事項に「精神疾患に関する事項」が定められていることの問題点を指摘している。

 「重要経済安保情報保護活用法」は、2013年に成立した「特定秘密の保護に関する法律(特定秘密保護法)」を経済安保分野へと拡大するもの。国家の安全保障上重要な経済分野の情報を「重要経済安保情報」に指定し、その取り扱いを適性評価制度により認められた者に限るとしている。評価対象者に対する調査事項が7点示され、その1つとして「精神疾患に関する事項」が挙げられている。この点は「特定秘密保護法」における適性評価制度と同様である。

 同学会は2014年にも「特定秘密保護法における適性評価制度に反対する見解」を発出し、①精神疾患、精神障害に対する偏見、差別を助長し、患者、精神障害者が安心して医療・福祉を受ける基本的人権を侵害する、②医療情報の提供義務は、医学・医療の根本原則(守秘義務)を破壊する、③精神科医療全体が特定秘密保護法の監視対象になる危険性が高い―との3点を反対理由として示していた。しかし、この問題は「重要経済安保情報保護活用法」に基づく適性評価制度においても解消されていない

精神科治療を必要とする者の受診抑制につながりうる

 適性評価は評価対象者の「同意」に基づいて実施されるとされているが、この「同意」は事実上の強制であると「見解」は指摘している。

 また適性評価実施担当者は、上司、人事担当課の職員、同僚などに対し評価対象者について質問することができ、過去に評価対象者を雇用していた事業者などに対して評価対象者に関する情報の提供を求めることができる点も問題視。精神疾患により受療中の者のプライバシーが守られなくなり、本人の自尊感情だけでなく家族も含めた生活が脅かされかねず、さらに精神科治療を必要とする者の受診抑制につながりうると懸念を示している。

 この他、適性評価実施後の措置として上司や事業者からの長期の監視の対象となること精神疾患への誤解や偏見、排除につながる可能性に言及した上で、「精神科医療の立場から、重要経済安保情報保護活用法とその運用基準および適性評価において示された、精神疾患に対する適性評価制度に反対する」とまとめられている。

(編集部・畑﨑 真)

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