厚生労働省は本日(7月30日)付で医薬局医薬安全対策課長通知(医薬安発0730第1号)を発出し、添付文書の「使用上の注意」の改訂を指示した。「重大な副作用」の項について、①GLP-1受容体作動薬セマグルチド(商品名ウゴービ、オゼンピック、リベルサス)、GIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチド(ゼップバウンド、マンジャロ)、インスリングラルギンとGLP-1受容体作動薬リキシセナチドの配合薬(ソリクア)は「イレウス」、②第二世代上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)アファチニブマレイン酸塩(ジオトリフ)および抗エストロゲン薬フルベストラント(フェソロデックス)は「アナフィラキシー」、③マルチキナーゼ阻害薬スニチニブリンゴ酸塩(スーテント)は「高アンモニア血症」、④抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(キイトルーダ)は「血管炎」-をいずれも新設。抗PD-L1抗体アベルマブ(バベンチオ)は「重要な基本的注意」および「副作用」の項に「硬化性胆管炎」に関する記述を追加などの改訂を指示している。(関連記事「デスモプレシン、経口薬・点鼻薬にもアナフィラキシー追記」) GLP-1アゴニスト:因果関係が否定できないイレウス関連症例が集積 GLP-1アゴニスト作用を有する3剤については、イレウス関連症例を評価した。その結果、国内症例がセマグルチドで25例(うち医薬品との因果関係が否定できない症例7例)、チルゼパチドで22例(同2例)、インスリングラルギン/リキシセナチド配合薬で3例(同1例)の集積が確認された。 セマグルチドの1例は適応外症例で、いずれも因果関係が否定できない死亡例はなかったものの、専門委員の意見も踏まえて改訂が適切と判断した。「特定の背景を有する患者に関する注意」の「合併症・既往歴等のある患者」の項に「腹部手術の既往又はイレウスの既往のある患者」を新設するとともに、「重大な副作用」の項に「イレウス」を新設。「腸閉塞を含むイレウスを起こすおそれがある。高度の便秘、腹部膨満、持続する腹痛、嘔吐等の異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと」の記載を追加した。 アファチニブ、フルベストラント:因果関係が否定できないアナフィラキシー症例が集積 アファチニブとフルベストラントについては、アナフィラキシー関連症例を評価したところ、国内症例がそれぞれ5例(うち医薬品との因果関係が否定できない症例3例)、21例(同6例)集積。いずれも死亡例はなかったものの、専門委員の意見も踏まえて「重大な副作用」の項に「アナフィラキシー」を新設することが適切と判断した。 スニチニブ:国内外で高アンモニア血症症例が集積 スニチニブについては、高アンモニア血症関連症例を評価した結果、国内症例が7例(うち医薬品との因果関係が否定できない症例1例)、海外症例が13例(同2例)集積。いずれも因果関係が否定できない死亡例はなかったものの、肝機能異常を伴わずに発現する高アンモニア血症症例が認められたことなどに鑑み、「重大な副作用」の項に「高アンモニア血症」を新設。「肝機能異常を伴わずに、高アンモニア血症があらわれることがある。意識障害が認められた場合には、血中アンモニア値の測定を考慮すること」の記載を追加するよう指示した。 ペムブロリズマブ:因果関係が否定できない血管炎症例が11例集積 ペムブロリズマブについては、血管炎関連症例を評価した。その結果、国内症例が35例(うち医薬品との因果関係が否定できない症例11例)集積。専門委員の意見も踏まえ、「重大な副作用」の項に「血管炎」を新設し、「大型血管炎、中型血管炎、小型血管炎[抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎、IgA血管炎を含む]があらわれることがある」の記載を追加するよう指示した。 アベルマブについては、硬化性胆管炎関連症例を評価したところ、国内症例8例(うち医薬品との因果関係が否定できない症例4例)の集積が確認された。専門委員の意見も踏まえた上で、「重要な基本的注意」の項に「硬化性胆管炎」に関する注意を追記し、「副作用」の「重大な副作用」の項にも「硬化性胆管炎」を追記するよう指示した。 詳細は、厚労省の「医薬安発0730第1号」を参照されたい。 (編集部・関根雄人)