JDDW 2025:MTW読者の声で探る! 消化器病診療におけるAIインパクト

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

 消化器病領域は、人工知能(AI)の開発や導入が最も進んでいる分野の1つといえ、研究や試験的な利用を超えて、臨床現場で日常的にAIを活用することが当たり前になりつつあります。この変化は臨床に大きなインパクトを与えており、日本消化器関連学会週間(JDDW)でも近年注目度の高い話題になっています。そこで、第33回日本消化器関連学会週間(JDDW 2025)の開催に先立ち、Medical Tribuneウェブの読者を対象に、消化器診療における生成AIを含むAI活用の現状や期待、課題についてアンケートを実施。寄せられた回答を基に、臨床で広がるAIの活用に対して医師が抱く実感と展望、そしてJDDWへの期待を探ります。

過半数が医療AIの普及を実感、望まれる診断・診療への貢献

 アンケートは消化器領域を専門とするMedical Tribuneウェブの医師会員を対象に行い、434人の回答が集まりました。

 日常診療で使用経験のある医療AIについて聞いたところ、「上部消化管内視鏡AI」が109件、「大腸内視鏡AI」が103件と内視鏡関連が多く、「画像診断支援AI(X線・CT・MRI・超音波)」は59件にとどまりました。病理や外科領域での活用は限定的であり、一方で「使用経験はない」との回答は265件に上りました(図1)

図1. 日常診療で使用経験のある医療AI

図1. 日常診療で使用経験のある医療AI

 直近1年において、現場での医療AIの普及を実感しているかどうかを尋ねたところ、「はい」が53.9%と過半数を占め、「いいえ」は25.3%にとどまりました(図2)。多くの現場で医療AIが浸透しつつあることが示唆されました。

図2. 直近1年における現場での医療AI普及に対する実感

図2. 直近1年における現場での医療AI普及に対する実感

 医療AIに最も期待する点としては、「診断精度の向上」が48.4%と突出し、次いで「診療の効率化・省力化」が24.9%と多く、「医療事故のリスク低減」が10.4%、「医療従事者の負担軽減」が9.9%でした。「コスト削減」や「患者コミュニケーション支援」は少数回答にとどまり、診断や診療への寄与に対する期待が強いことがうかがえました(図3)。その他、「患者への受診啓発」「病変発見精度の向上」「内視鏡における見落とし防止」といった意見も寄せられました。

図3. 医療AIに最も期待すること

図3. 医療AIに最も期待すること

 医療AIの活用に際する懸念事項では、「AIの診断や提案の正確性・信頼性」が223件で最も多く、「AIの誤作動・誤診断による医療事故リスク」が132件と続き、臨床に直結する部分での不安の大きさが示されました。また、「AIへの依存による臨床能力の低下」を懸念する声も76件あり、AI依存に対する根強い警戒感がうかがえました。さらに、「個人情報や医療データのプライバシー・セキュリティ」(78件)や「医療倫理や法的責任の所在が不明確」(67件)といった情報管理や制度面での課題も指摘されました(図4)

図4. 医療AIの活用に際する懸念事項

図4. 医療AIの活用に際する懸念事項

使用頻度に差があるも、広がる活用の幅

 生成AIの使用頻度を見ると、「毎日使用している」(8.3%)、「週に数回使用している」(18.0%)という比較的高頻度で使用する層が一定数見られました。一方で、「月に数回使用している」(26.3%)にとどまる層や、「全く使用していない」(47.5%)と答えた医師も多く、使用状況には大きな幅がありました(図5)

図5. 生成AIの使用頻度

図5. 生成AIの使用頻度

 生成AIの活用場面として多かったのは「医療情報や医学論文の検索・収集」(156件)と「医療文書の作成や要約」(129件)でした。「最新医学論文やガイドラインの要約」、「研究報告や英語論文の作成」といった学術的な用途に加え、「外国人を含む患者・家族との対話補助」、「ナレッジ共有」などの説明や情報共有での利用も見られました(図6)

図6. 生成AIの活用場面

図6. 生成AIの活用場面

8割超がAIの活用に前向き、JDDWに期待される"標準化"

 医療AIの活用に対する立場について10段階で評価してもらったところ、「⑩積極的に活用したい」(18.9%)が最も多く、さらに⑥~⑧に約50%が集中しました。全体としては⑥以上が80.9%を占めており、活用に前向きな傾向がありました。対照的に「導入には否定的である」は0.5%にとどまりました(図7)

図7. 医療AIの活用に対する立場(10段階評価)

図7. 医療AIの活用に対する立場(10段階評価)

 AIの活用に向けてJDDWへの期待を聞いたところ、「医療AIの使用法や安全性の標準化」(233件)という回答が最多で、統一的な指針の整備を求めていることが明らかになりました。「医療AIの開発や性能向上の研究への支援」(200件)や「AI開発・検証に利用できる多施設臨床データ活用基盤の整備」(110件)も多く、実装に向けた基盤構築への要望が強く示されました。さらに「AIリテラシーやAI技術に関する教育機会の提供」「医療AIの診療報酬や倫理指針など制度設計でのリーダーシップ」も一定の支持を集め、JDDWの役割に対する期待の高さがうかがえました(図8)

図8. AIの活用に向けてJDDWに期待すること

図8. AIの活用に向けてJDDWに期待すること

 JDDW 2025でのAI関連セッションへの参加意向については、「AIが主要テーマであればぜひ参加したい」が22.1%、「AIが内容の一部でも含まれるなら優先的に参加したい」が18.7%と、積極的な回答が目立ちました。「AIが含まれていれば注目したい」、「内容次第では参加したい」を合わせると95.4%に上り、AIを扱うセッションに対する関心の高さが示されました(図9)

図9. JDDW 2025でのAI関連セッションへの参加意向

図9.  JDDW 2025でのAI関連セッションへの参加意向

 今回のアンケートからは、多くの消化器領域の医師が生成AIを含めたAI活用に強い関心を示し、JDDWに対しては方向性の提示や基盤整備など重要な役割を担うことへの期待が高いことが明らかになりました。JDDW 2025では、教育講演5「上部消化管内視鏡診療におけるAIの現状と課題」をはじめ医療AIを取り上げるセッションが企画され、デジタルポスターセッションでもAIに関する多数の研究が発表されます。JDDW 2025への参加を通じて、AIをめぐる議論の最前線に触れてください。

第68回日本消化器病学会大会

[会長]海野 倫明東北大学大学院 消化器外科学

第112回日本消化器内視鏡学会総会

[会長]石原 立
大阪国際がんセンター 消化管内科

第30回日本肝臓学会大会

[会長]波多野 悦朗
京都大学大学院 肝胆膵・移植外科

第24回日本消化器外科学会大会

[会長]上野 秀樹
防衛医科大学校 外科

第64回日本消化器がん検診学会大会

[会長]三上 達也
弘前大学大学院 先制医療学

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