データベースを活用した内視鏡研究の最前線

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ
ワークショップ18(日本消化器内視鏡学会・日本消化器病学会・日本消化器外科学会・日本消化器がん検診学会)

11月1日(土) 14:30〜17:00 第12会場(神戸国際会議場 メインホール)

[司会]

尾田 恭 氏

尾田胃腸内科・内科

松田 浩二 氏

国立静岡医療センター・消化器内科

[演者]

豊嶋 直也 氏

国立がん研究センター中央病院・消化管内視鏡科

豊島 治 氏

とよしま内視鏡クリニック

三吉 範克 氏

大阪大・消化器外科、大阪国際がんセンター・がん医療創生部

前田 夏美 氏

大阪公立大大学院・消化器内科学

後藤 光宏 氏

国立がん研究センター東病院・消化管内視鏡科

高村 祐磨 氏

長崎大・腫瘍外科

宮岡 正喜 氏

福岡大筑紫病院・内視鏡部

田中 由香里 氏

京都大大学院・消化器内科学

阿部 寛子 氏

東北大大学院・消化器病態学

市田 親正 氏

湘南鎌倉総合病院・消化器病センター、横浜市立大・データサイエンス研究科HDS専攻

齋藤 友隆 氏

東京大・消化器内科

中村 晃 氏

信州大・消化器内科

[特別発言]

緒方 晴彦 氏

藤田医大東京先端医療研究センター、藤田医大羽田クリニック・消化器内科

尾田 恭 氏

松田 浩二 氏

 医療のビッグデータ活用が加速している。消化器領域も例外ではなく、学会主導のJapan Endoscopy Database(JED)-Projectの普及に伴い、内視鏡診療データの蓄積と標準化、臨床現場での利活用が広がっている。本セッションは、データ活用の基盤づくりに関する実装と検証の報告を横断的に示すものである。「私たち司会者が直に聞きたい演題ばかり」と語る松田浩二氏に、その魅力を聞いた。

ビッグデータ(JED-Project、DPC)を用いた実装と検証を報告

 JED-Projectに関連する発表は3演題。豊嶋直也氏は、電子問診票の導入により誤入力やデータ欠損を低減し、日常診療の中で高精度データを収集する実装論を示す。田中由香里氏は、JED-Projectのデータベース(DB)から自己免疫性胃炎例を抽出・解析し、診断の実態と施設差を可視化した。宮岡正喜氏はJED-Projectの入力項目を拡張し、胃浸潤がん回避に資する上部内視鏡の適正検査間隔を多施設前向きに検証する計画を提案する予定だ。「DBを応用したこれらの取り組みは、同プロジェクトの発足当初からの方向性を体現したもの」と松田氏は話す。

 4演題では、診断群分類包括評価(DPC)を活用した研究について発表される。阿部寛子氏は、プロトンポンプ阻害薬の処方が胃の内視鏡的粘膜切除術(EMR)/内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)の後出血を抑えたことを報告する。市田親正氏は、17万例超の大腸ESD症例を解析し、直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)の翌日再開が血栓塞栓症を減らしつつ、出血増を招かないことなどを明らかにした。齋藤友隆氏は、急性膵炎後の膵周囲液体貯留(PFC)治療におけるLumen Apposing Metal Stent(LAMS)導入で出血リスクと入院コストが増加することを全国規模で検証した。中村晃氏は、悪性遠位胆道狭窄に対する被覆型自己拡張型金属ステント(CSEMS)と非被覆型(USEMS)を比較した結果を示す。

クリニックDBから多施設AIまで、現場発エビデンスを可視化

 残る5演題は、臨床現場でDBを活用するための基盤整備の具体化に関する報告である。豊島治氏は、一般のクリニックでも入力動線や統計設計を整備すれば、施設規模に依存せず質の高い研究が可能であることを手法と実績に基づき示す予定である。三吉範克氏は、多施設DBとAIを組み合わせ、症例ごとに合併症のリスクを評価して治療を最適化する道筋を提示する。前田夏美氏は、院内データウェアハウスと周術期看護記録の突合による鎮静下内視鏡の安全性評価を検証し、複数DBの統合が臨床判断に直結することを実証する。後藤光宏氏の検討は、Web登録システムを用いた前向きコホートの副次解析から新たな知見を引き出し、レジストリデータの活用範囲を広げる。高村祐磨氏は、症例数が限られる地域で多施設DBの統合・連携、発表・論文化を加速させる取り組みを紹介。大都市圏外で研究を行う実践的ノウハウとして有用性が期待される。

 最後に、JED-Projectを創成期から支援してきた緒方晴彦氏による特別発言が予定されている。DB活用の歩みと教訓、AI時代を見据えた次世代の設計視点が簡潔に語られる見込みで、松田氏は「DBを活用した研究報告は十年前には注目度が低かったが、いまや臨床を動かす現実的な手段となりつつある。会場で演者の生の発表と質疑を体感し、各施設の次の一手に結び付けてほしい」と参加を呼びかけている。

※本記事の内容は取材時点での情報です。当日に変更となる場合があります。

第68回日本消化器病学会大会

[会長]海野 倫明
東北大学大学院 消化器外科学

第112回日本消化器内視鏡学会総会

[会長]石原 立
大阪国際がんセンター 消化管内科

第30回日本肝臓学会大会

[会長]波多野 悦朗
京都大学大学院 肝胆膵・移植外科

第24回日本消化器外科学会大会

[会長]上野 秀樹
防衛医科大学校 外科

第64回日本消化器がん検診学会大会

[会長]三上 達也
弘前大学大学院 先制医療学

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