厚生労働省は昨日(11月26日)付で医薬局医薬安全対策課長通知(医薬安発1126第1号、第2号)を発出、添付文書の「使用上の注意」の改訂を指示した。①直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)4製剤およびビタミンK拮抗薬ワルファリンカリウム(商品名ワーファリン)は「重大な副作用」の項に「脾破裂に至る脾臓出血」を追加、②抗PD-L1抗体のアテゾリズマブ(テセントリク)は「重大な副作用」の項に「溶血性貧血」を新設、③エンドセリン受容体拮抗薬のボセンタン水和物(トラクリア他)は「重大な副作用」の項に「自己免疫性肝炎」を新設など、④ゴーシェ病の酵素補充療法に用いられるイミグルセラーゼ(セレザイム)は「重大な副作用」の項に「Infusion reaction」を追加など、⑤脊髄性筋萎縮症(SMA)治療薬のオナセムノゲン アベパルボベク(ゾルゲンスマ)は「重要な基本的注意」の項の「心筋トロポニンI(TnI)」の測定頻度に関する記述を変更-などの改訂を指示している。(関連記事「イムデトラ、サイトカイン放出症候群で添文改訂」) 経口抗凝固薬:因果関係が否定できない脾破裂症例が国内外で集積 DOACのアピキサバン(商品名エリキュース)、エドキサバントシル酸塩水和物(リクシアナ)、ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩(プラザキサ)、リバーロキサバン(イグザレルト)およびワルファリンカリウムについては、脾破裂リスクについて国内外の症例、世界保健機関(WHO)個別症例安全性報告グローバルデータベース(VigiBase)を用いた不均衡分析結果を評価した。その結果、国内症例がアピキサバンで1例(うち医薬品との因果関係が否定できない症例0例)、ワルファリンカリウムで5例(同4例)、海外症例がダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩で9例(同4例)、リバーロキサバンで4例(同2例)の集積が確認された。 因果関係が否定できない死亡例はなかったが、①経口抗凝固薬(OAC)による脾破裂の機序は明確ではないものの、文献ではOAC投与下において脾臓における止血機構に変化が生じ、脾臓出血を来して脾破裂に至るものと推察されている。推察されている機序を考慮すると、脾破裂はOACクラスにおいて潜在的なリスクになりうる、②VigiBaseを用いた不均衡分析において、OAC 5成分全てに「脾破裂」に関連する副作用報告数がデータベース全体から予測される値より有意に高かった-ことから、専門委員の意見も踏まえて改訂が適切と判断。「副作用」の「重大な副作用」の項に「脾破裂に至る脾臓出血」を追記するよう指示した。 アテゾリズマブ:因果関係が否定できない溶血性貧血症例が国内で11例集積 アテゾリズマブについては、溶血性貧血関連症例を評価したところ、国内症例が16例(うち医薬品との因果関係が否定できない症例11例)集積。死亡例はなかったものの、因果関係評価および専門委員の意見も踏まえて「重大な副作用」の項に「溶血性貧血」を新設することが適切と判断した。 ボセンタン:因果関係を否定できない自己免疫性肝炎の海外症例が12例集積 ボセンタン水和物については、自己免疫性肝炎症例を評価したところ、海外症例が30例(うち医薬品との因果関係が否定できない症例12例)集積。因果関係を否定できない死亡例はなかったものの、因果関係評価および専門委員の意見も踏まえて「重大な副作用」の項に「自己免疫性肝炎」を追記し、「警告」および「用法及び用量に関連する注意」の項における肝機能障害に関連する注意事項に自己免疫性肝炎を追記する記載整備を行うことが適切と判断した。 イミグルセラーゼ:因果関係を否定できないInfusion reaction症例が国内外で集積 イミグルセラーゼについては、注入に伴う反応症例を評価したところ、国内症例が1例(うち医薬品との因果関係が否定できない症例1例)、海外症例が8例(同7例)集積。死亡例はなかったものの、因果関係評価および専門委員の意見も踏まえて「重大な副作用」の項に「Infusion reaction」を追記し、「重要な基本的注意」の項における過敏症が発現した場合の注意喚起にも「infusion reaction」を追記するよう指示した。 オナセムノゲン アベパルボベク:TnI上昇を契機とする心機能低下例は認められず オナセムノゲン アベパルボベクについては、投与後におけるTnIの上昇と心毒性との関連性を評価した。①TnIが上昇することがあるが軽度であり、TnI上昇を契機とする心機能低下症例は認められなかった、②同薬投与後にTnIの上昇が認められており心筋の損傷が生じていることが示唆され、非臨床試験および臨床試験で認められた心毒性リスクは否定されていない-ことを踏まえ、TnIのモニタリング規定の見直しに係る使用上の注意の改訂要否について、専門委員の意見も聴取した結果、定期的なTnI測定に係る規定を維持する合理性は高くないと判断。「重要な基本的注意」の項のTnI測定期間および測定頻度に係る現行の規定を削除の上、同薬投与前および投与後おおむね1カ月以内にTnIを測定するよう、改訂することが適切した。 その他、第Ⅹa因子阻害薬特異的中和薬のアンデキサネット アルファ(商品名オンデキサ)は、薬物動態/薬力学モデルを用いたシミュレーションの結果に基づき「重要な基本的注意」の項に同薬投与終了4時間後時点で、直接作用型第Xa因子阻害薬または低分子ヘパリンによる本来の抗凝固作用が期待できる旨などを追記。ニューキノロン系抗菌薬のトスフロキサシントシル酸塩水和物(オゼックス他)は、「重大な副作用」の項に「尿路結石」を追記し、結晶尿を伴う急性腎障害に関する注意を追記するよう指示した。 詳細は、厚労省の「医薬安発1126第1号、第2号」を参照されたい。 (編集部・関根雄人)