2025年11月14〜15日、グランドニッコー東京台場で第80回日本大腸肛門病学会が開催された。記念すべき第80回となった同会では、企業展示ブースでも臨床現場の課題解決や手技支援、疾患啓発に向け各社の力強いメッセージが発信された。 術野の安全性に寄与する最新デバイス 多くの参加者が足を止めていたのが、外科手技に関するデバイスを提供する医療機器メーカーApplied Medical Japanのブースである。同社が展示した「Alexis ウーンドプロテクター/リトラクター」は、切開創部を保護しながら、360°円形の低侵襲な開創を提供するデバイス。腹壁の厚みや創の形状に合わせてリングがフィットし、広い術野の確保が可能となる。切開部表層の手術部位感染(SSI)低減が期待されるという。 排泄ケア領域では、コロプラストが経肛門的洗腸療法で用いる医療機器を中心に展示。同社では脊髄疾患のため排便に悩みがある患者への情報提供として、情報サイト「スッキリ排便.jp」の周知にも力を入れており、同サイトでは経肛門的洗腸療法の「実施施設一覧」を掲載、患者が医療機関にアクセスできる導線設計に配慮しているという。製品というハードウエアだけでなく、患者と医療をつなぐソフトウェア(情報基盤)の提供にも注力する姿勢が印象的であった。 数ある製薬企業の中で大きな存在感を示していたのは、ヤンセンファーマである。同社は炎症性腸疾患(IBD)治療薬抗インターロイキン(IL)-23p19抗体グセルクマブ(商品名トレムフィア)の製品展示だけでなく、学会期間に合わせた大規模な疾患啓発活動を展開した。 学会近隣のJR新橋駅や東京臨海新交通臨海線(ゆりかもめ)台場駅には「Imagine Better Days」をテーマとした印象的な一面広告が掲出され、参加者の目を引いた。広告の「患者さんのよりよいクオリティ・オブ・ライフを描きながら、IBDの治療に貢献します」というメッセージからは、製品のプロモーションにとどまらず、患者の人生に寄り添うという同社の姿勢が強調されていた。 今回の展示では、手術支援デバイスによる「手技の向上」、患者と医療機関をつなぐ「情報の提供」、そして公共空間を使った「疾患啓発」と、企業による多層的なアプローチが見られた。 (第80回日本大腸肛門病学会取材班)