2025年12月11~13日、パシフィコ横浜で第38回日本内視鏡外科学会が開催された。企業展示ブースでは、手術支援ロボットの進化に加え、人工知能(AI)による術中支援技術の実装がトレンドとして示され、最新テクノロジーを求める多くの医療従事者でにぎわいを見せた。 AIデータ解析で手術を効率化 手術支援ロボット領域では、機能の深化と新たなコンセプトの登場が注目を集めた。 インテュイティブサージカルのブースでは、最新モデルDa Vinci 5と単孔式システムDa Vinci SPが展示された。Da Vinci 5は、フォースフィードバック機能が実装されたことに加え、AIによるデータ解析機能を強化。手技のデータ化を通じて手術の効率化に寄与するという。Da Vinci SPは1つの切開創からアプローチするため、侵襲性の低さから術後合併症のリスク低減に寄与できる点が強調されていた。 シスメックスは国産手術支援ロボットhinotoriを展示。担当者によると、性能の高さとともに、導入・運用コストに配慮されたコストパフォーマンスがあらためて評価されているという。大学病院だけでなく、地域医療を支える中規模病院での導入も検討される可能性がある。 朝日インテックは、執刀医自身が操作する従来の方式とは異なる、協働型助手ロボットANSUR(アンサー)を紹介。執刀医の傍らでスコープ保持や臓器牽引を担い、物理的に手術をサポートする。医師不足やスタッフが限られる緊急手術への対応に際し、現場の課題解決に直結するソリューションとして期待されている。 吻合手技の自動化で注目されたのはメドトロニック(コヴィディエンジャパン)だ。新世代ステープリング技術Signia サーキュラーステープラーは、ステープルラインを従来の2列から3列に進化させることで、血流環境を約140%改善。全自動化により安定した吻合形成を支援する。また、教育現場での活用が期待されるAI術中画像解析ソリューションのプロトタイプも展示された。 最新技術で死角のない術野展開を実現 内視鏡システムとエネルギーデバイスの融合を見せたのがオリンパスである。内視鏡システムVISERA ELITE Ⅲは4K・3Dの高画質で、先端湾曲ビデオスコープはスコープ先端が自在に動くことで低侵襲性を保ちつつ死角のない術野展開を実現する。 また高周波シーリングデバイスPOWER SEALは、優れた血管封止性能と多機能性を兼ね備え、術者の疲労を軽減するエルゴノミクスデザインが採用されている。 同社はハードウエアだけでなくデジタルサービスも強化。会員制サイトのアプリ版「メディカルタウンアプリ」のリリースをアナウンスし、医師が必要な情報へとスムーズにアクセスできる環境を整備することで、顧客体験(CX)の向上を目指す姿勢が印象的だった。 AIと低侵襲デバイスが支える安全性 慶應義塾大学発のスタートアップ企業であるDireavaは、AIを用いた画像解析・手術支援システムを紹介した。食道がん手術において、注意すべき神経や重要組織をリアルタイムに認識・可視化する技術を提示。経験が浅い医師への教育効果に加え、高難度手術における安全性向上への貢献が期待され、多くの外科医が足を止めていた。 Applied Medical Japanは、低侵襲手技を支えるデバイスとして、アクセスポートGel POINT PATH、Gel POINT V-PATHを展示。柔軟な適合性と高い気密性が特徴で、より患者負担の少ない術式を可能にするデバイスとして、来場した医師らから高い評価を得ていた。 (第38回日本内視鏡外科学会取材班)