薬剤師のための漢方薬講座/鼻閉・鼻汁-治療につかう漢方薬- 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする 亀田総合病院 東洋医学診療科南澤 潔 氏 鼻閉(鼻詰まり)や鼻汁はいわゆるかぜ(普通感冒)のときにもよくある症状ですが(急性鼻炎)、短期間で治癒する急性鼻炎はともかく、数週間以上にわたって続く慢性的な鼻症状が日常生活に与える影響は甚大です。 目次 本治に用いる漢方薬 ◆冷えや水毒による症状(水っぽい鼻汁など)小青竜湯 苓甘姜味辛夏仁湯 麻黄附子細辛湯 (越婢加朮湯:熱と水毒) ◆熱性の炎症による症状(鼻閉や粘性の鼻汁など)辛夷清肺湯 荊芥連翹湯 ◆気虚を伴う症状補中益気湯 十全大補湯 建中湯類 ◆脾胃の状態を良くする方剤がアレルギーを改善する!? 標治に用いる漢方薬 小青竜湯 荊芥連翹湯 辛夷清肺湯 葛根湯加川芎辛夷 越婢加朮湯 ◎本治に用いる漢方薬 ◆冷えや水毒による症状(水っぽい鼻汁など)小青竜湯 苓甘姜味辛夏仁湯 麻黄附子細辛湯 (越婢加朮湯:熱と水毒) 冷えと水毒を伴う病態の鼻炎では、小青竜湯(しょうせいりゅうとう)や苓甘姜味辛夏仁湯(りょうかんきょうみしんげにんとう)がよく用いられます。両者の構成生薬を比較すると、小青竜湯の8つの生薬のうち麻黄(まおう)、桂枝(けいし)、芍薬(しゃくやく)が、苓甘姜味辛夏仁湯では茯苓(ぶくりょう)、杏仁(きょうにん)に入れ替わった格好です。 麻黄、桂枝は温めて発散する力が強い、太陽病期に用いられる代表的な生薬です。特に、エフェドリン類の起源植物でもある麻黄を含むか否かは即効性にも影響する大きな相違点です。また、冷えと水毒を強力に改善する生薬である附子(ぶし;トリカブトの根茎は、エキスでも"附子末"として流通しており、小青竜湯や苓甘姜味辛夏仁湯に加味して用いられることもあります。 麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)は附子と同時に麻黄を含む数少ない方剤の1つですが、肺を温める細辛(さいしん)も含んでおり、単独で用いられるのみならず小青竜湯と併用するような使い方をされることもあります。 スギ花粉症などで強い目の痒みを伴っているような、水気の多い炎症が前景に立つ病態では越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)が用いられます。 ◆熱性の炎症による症状(鼻閉や粘性の鼻汁など)辛夷清肺湯 荊芥連翹湯 ◆気虚を伴う症状補中益気湯 十全大補湯 建中湯類 副鼻腔炎などで、熱性の炎症が主体の鼻閉や粘性の鼻汁には、辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)や荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)が用いられます。さらに、副鼻腔炎のような慢性の炎症では治癒機転を妨げるような生体のエネルギー不足、すなわち「気虚」を伴っていないかという点にも注意が必要です。必要に応じて補剤、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)や十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)、建中湯類を用いることもあります。 ◆脾胃の状態を良くする方剤がアレルギーを改善する!? 建中湯類など、腸管の状態を改善することが期待される方剤でアレルギー自体が改善してくることを、特に小児で、しばしば経験します。最近、腸管免疫や腸内細菌叢と体質の密接な関連が明らかになりつつありますが(糞便移植って聞いたことありませんか? )、漢方には脾胃を改善する方剤が多数用意されています。東洋医学の世界では、その昔から消化器系が全身に及ぼす影響の大きさに気付いていたのかもしれません。 ◎標治に用いる漢方薬 小青竜湯 荊芥連翹湯 辛夷清肺湯 葛根湯加川芎辛夷 越婢加朮湯 鼻閉、鼻汁では小青竜湯が有名ですね。水気の多いくしゃみが連発したり、水のような鼻水が滴り落ちてくるような病態によく効きます。ただし、小青竜湯は麻黄が含まれている方剤(麻黄剤)であることに、若干の注意が必要です。まれではあるものの、胃腸障害や動悸、高齢者では尿閉などの副作用が報告されています。 鼻閉を主症状とする患者さんには、前記の辛夷清肺湯や荊芥連翹湯に加え、葛根湯加川芎辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)も用いられます。 一般的に、症状が出てから病院に駆け込んでくる方が多いので、即効性の面からか、麻黄が含まれる方剤が頻用されます。中でも越婢加朮湯は麻黄の含有量が多く、症状が強い場合によく効くことがしばしば見られます(その分、副作用には注意も必要です)。 漢方イロハ 六病位(ろくびょうい) 東洋医学では、6 段階の病期による分類が行われます。 「陽」から「陰」の病期へ進んでいくと考えられています。太陽病期は陽病の始まりで、感冒がその典型です。 ◆執筆者◆ 南澤 潔 氏 医学博士日本東洋医学会 漢方専門医・指導医日本内科学会 総合内科専門医・指導医日本救急医学会 救急科専門医 【ご略歴】1991年 東北大学医学部 卒業1991年 武蔵野赤十字病院 研修医1993年 富山医科薬科大学(現 富山大学)和漢診療科1995年 諏訪中央病院 内科1996年 成田赤十字病院 内科1999年 麻生飯塚病院 漢方診療科2001年 富山大学 和漢診療科2006年 砺波総合病院 東洋医学科 部長2009年 亀田総合病院 東洋医学診療科 部長 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする ×