悪化し始めたら吸入ステロイドを4倍に?

喘息管理のストラテジー

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

研究の背景:吸入ステロイドの一時的な増量はよく行われている

 実臨床では、「なんか最近調子が悪い」という訴えで吸入ステロイド薬(ICS)を増量することがある。特に花粉症の時期に喘息コントロールが悪化する一群に対して行われており、専門用語でadjustable maintenance dosing(AMD)療法と呼ぶ。AMD療法は主に、ICSと長時間作用性β2刺激薬(LABA)の配合剤ブデソニド/ホルモテロール(シムビコート®)を用いて行われるもので、Single inhaler maintenance and reliever therapy (SMART療法)が普及してからというもの、鳴りを潜めている。

 AMD療法は、喘息増悪要因により気道炎症が悪化した際、一時的に長期管理薬としてのICSを増量する手法である。例えば、前述したように花粉症の時期に必ず喘息発作が悪化する人では、冬の終わりごろからICS用量を増やして、夏になるとICS用量を減らすというものだ。また、ストレスが多くなるような旅行に行く前や、なんとなく風邪っぽいときにICS用量を増やすといった対応もAMD療法に含まれる。同じタイプの配合剤であるフルチカゾンプロピオン酸エステル/サルメテロール(アドエア®)の固定用量との比較において、シムビコート®を用いたAMD療法の方が有意に喘息症状を改善させ喘息発作を減らしたという報告もある(Respir Res 2007;8:46)。

 ともかく、実臨床でAMD療法は恐らく頻繁に行われているが、ICSを4倍に増やすという手法はどうだろうか。「そこまで増やさなくてもいいんじゃないか」という意見もありそうだが、今回大規模臨床試験において、喘息コントロールが悪くなり始めた時点でICSを4倍に増量するというストラテジーが評価された(N Engl J Med 2018;378:902-910)。

倉原 優 (くらはら ゆう)

国立病院機構近畿中央胸部疾患センター内科医師。2006年、滋賀医科大学卒業。洛和会音羽病院での初期研修を修了後、2008年より現職。日本呼吸器学会呼吸器専門医、日本感染症学会感染症専門医、インフェクションコントロールドクター、音楽療法士。自身のブログで論文の和訳やエッセイを執筆(ブログ「呼吸器内科医」)。著書に『呼吸器の薬の考え方、使い方』、『COPDの教科書』『気管支喘息バイブル』、『ねころんで読める呼吸』シリーズ、『本当にあった医学論文』シリーズ、『ポケット呼吸器診療』(毎年改訂)など。

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