LIFE HAPPY WELL福井 繁雄 19歳のある日、「薬飲んだら頭痛くなるんよ」という祖母の一言をきっかけに、残薬について考えるようになった僕。それから薬剤師になり、残薬解消のための活動を始めた。 このコラムでは、薬局薬剤師の僕が在宅や薬局での業務の中で行った、残薬に関する取り組みを紹介する。僕の奮闘記が全国の薬剤師の励みになるだろうかーー。 この記事のポイント 医師に体調の相談をできず、薬を溜め込んでいた祖母 祖母の友人の自宅にも、手付かずのままの薬が3袋も残っていた。 同様の患者が全国にいるとしたら?これは、医療全体で取り組むべき問題だ! 「とにかく、薬が余ってしまう」 あれから(第1回)祖母は、きっちりと薬を飲むようにはなった。しかし、先生には相変わらず、体の不調などを伝えられずにいた。我慢の世代だからか。我慢が美徳だからか。 ある日、近所に住む祖母の友人と話す機会があった。 「とにかく、薬が余ってしまう。なのに、受診したときには先生には言えない」と。 祖母とまったく同じパターンだ。もしかして、全国には、こんなおじいちゃんやおばあちゃんがたくさんいるんじゃないか?こりゃ、薬余るよな。 ご自宅を訪問して、チェックさせてもらうことにした。 もらった薬はビニール袋に入ったまま、まったく手付かずの状態で......3袋くらいあった。 症状を聞いてみると、安定しているそうだ。薬は定期薬となり、毎回同じ日数分が出るとのこと。昼の薬は飲み忘れてしまう。朝夕の食事を取らないこともある。そうすると、さらに飲み忘れが出て残薬がたまるらしい。 こりゃあかん。これが全国規模でおこっているとすると、エライことだ(関西弁でエライは、大変なこと)! それから僕は、リサーチを始めた。当時はまだ薬学部生だったので、医学部や看護学部の同級生へ声をかけて、薬に関して患者さんからの訴えがあるかどうかを聞いてまわった。すると、患者さんはたいてい、医師の話を黙って聞いて頷くだけで、薬が余っていても自分から言うことはないと分かった。 「服薬状況も体調のことも、医師や看護師に伝えられていないーーこれは、医療業界全体が直視しなければならない問題だ!残薬を減らす運動をしなきゃ!」 ぼくの中に芽生えた残薬に関する問題意識は、だんだんと大きくなっていった。 【福井繁雄氏プロフィール】 薬学部卒業後、透析、CKD、ガン専門の薬局に13年勤務し、現在は在宅医療に関わっている。学生時代から行ってきた家族(特に祖母)のお薬管理を通じて、残薬管理に疑問を持ったことが、在宅医療に関わるようになった理由。これまでの経験を他の薬剤師にも生かしてもらいたいと、全国での研修会を月一回、行っている。自身は、生後3週間でアトピー性皮膚炎を発症し、リバウンドも経験。アトピー罹患者としての講演も行っている。 【研修会】 日本薬剤師研修センター認定の研修を月1回開催しています。開催スケジュール:日本薬剤師研修センター受講シール2単位取得研修会(LIFE HAPPY WELL)