慢性の息切れにモルヒネは?
研究の背景:オピオイドには呼吸困難を軽減する作用がある
オピオイドは、オピオイド受容体に作用することで鎮痛作用や鎮咳作用をもたらすが、息が苦しいという主観的な症状を取る作用もある。そのため、特に緩和ケアの領域では、モルヒネ製剤が呼吸困難に使われることがある。当院でも、塩酸モルヒネやオキシコドンの持続皮下注を導入することがある。
さて、今回紹介する研究では、登録患者のほとんどが慢性呼吸不全を有する慢性閉塞性肺疾患(COPD)である(Thorax 2019年9月26日オンライン版)。故に、悪性疾患ではなく、COPDに主眼を置いて話を進めていく。まず、代表的なガイドラインにおけるCOPDに対するオピオイドの位置付けを整理しておこう(表)。
表. 各ガイドラインにおけるCOPDに対するオピオイドの位置付け

プラセボとオピオイドの呼吸困難に対する効果を比較した16研究(271例、95%がCOPD患者)のメタ解析(Ann Am Thorac Soc 2015;12:1079-1092)によれば、オピオイドに呼吸困難を軽減するメリットがあるとされている。Johnsonらのグループによれば、ベースラインの呼吸困難の程度が悪い患者や若年患者では、オピオイドによる効果が出やすいとされている(Eur Respir J 2013;42:758-766)。ただしこれは、不利な条件の患者ほど相対的効果が大きく出やすい必然ともいえる結果を見ている可能性がある。
ただ、こうしたエビデンスがあっても、実臨床で処方されている症例はそう多くなく(Int J Chron Obstruct Pulmon Dis 2016 ;11:2651-2657)、個人的にもCOPDで慢性の息切れがあるからといって塩酸モルヒネの散剤を処方するプラクティスはしていない。これには、この散剤には息切れに対する保険適用がなく、がん性疼痛以外では、激しい咳嗽にしか保険適用されないというハードルも影響している。
今回取り上げるのは、慢性呼吸困難を有する患者に対する徐放性モルヒネ製剤の有効性を検証した、多施設共同二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験(RCT)である(Thorax 2019年9月26日オンライン版)。小規模な研究や観察研究が多い中、慢性呼吸困難に対するモルヒネの効果をめぐる議論に終止符を打とうとしたRCTである。
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倉原 優 (くらはら ゆう)
国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科医師。2006年、滋賀医科大学卒業。洛和会音羽病院での初期研修を修了後、2008年から現職。日本呼吸器学会呼吸器専門医、日本感染症学会感染症専門医、インフェクションコントロールドクター、音楽療法士。自身のブログで論文の和訳やエッセイを執筆(ブログ「呼吸器内科医」)。著書に『呼吸器の薬の考え方、使い方』、『COPDの教科書』、『気管支喘息バイブル』、『ねころんで読める呼吸』シリーズ、『本当にあった医学論文』シリーズ、『ポケット呼吸器診療』(毎年改訂)など。










