マスクの着用は有害か?

着用前後で酸素飽和度を検討した研究から

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

研究の背景:ユニバーサルマスキングが重視される一方、ネガティブな情報も

 米・マサチューセッツ州の病院からの報告では、医療スタッフに対してのみマスク着用徹底を奨励していたときには低下しなかった新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のPCR検査陽性率が、患者に対してもユニバーサルマスキング(症状の有無にかかわらず常時マスクを着用すること)を開始した後に低下したことが示された(JAMA 2020; 324: 703-704)。コロナ禍における院内感染対策について、医療従事者、患者、面会者などのユニバーサルマスキングの重要性が示されたことになる。

 今年(2020年)7月時点において、米疾病対策センター(CDC)はSARS-CoV-2感染者全体のうち無症候性感染者が占める割合は約40%と推定しているが、ユニバーサルマスキングによってこの割合が2倍の約80%になると考えている(N Engl J Med 2020; 383: e101)。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策としては、エアロゾル発生のリスク(高流量鼻カニュラ酸素療法、気管切開孔からの吸痰処置など)がなければサージカルマスクで十分とされており、市中においては布マスクでもなんら問題ないと考えられる(Sci Adv 2020; 6: eabd3083)。

 ただ、マスクは高齢者や基礎疾患のある人が無理に着用すると酸素飽和度(SpO2)が下がるので危険だというマスメディアの意見(BBC 2020年7月24日報道、下記関連リンク参照)もあり、実際私が勤務する呼吸器センターでは、息苦しさが助長されるのでマスクは付けたくないという患者もいる。

 さて、今回紹介するのは、マスクの着用前後でSpO2の変化を検討した論文である(JAMA 2020; 324: 2323-2324)。

倉原 優 (くらはら ゆう)

国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科医師。2006年、滋賀医科大学卒業。洛和会音羽病院での初期研修を修了後、2008年から現職。日本呼吸器学会呼吸器専門医、日本感染症学会感染症専門医、インフェクションコントロールドクター、音楽療法士。自身のブログで論文の和訳やエッセイを執筆(ブログ「呼吸器内科医」)。著書に『呼吸器の薬の考え方、使い方』、『COPDの教科書』、『気管支喘息バイブル』、『ねころんで読める呼吸』シリーズ、『本当にあった医学論文』シリーズ、『ポケット呼吸器診療』(毎年改訂)など。

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