何を見て薬を出すのか

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

「症状処方はいかんよ」

 中井久夫さんは症例検討会でたびたび、そう口にした。症状処方とは、症状に対して薬を出すこと。それの何がいかんのかとお思いになる方もいるかと思うが、患者が症状を訴えるたびに薬を出すと、薬の種類も量も増えてゆく。

 不安、動悸、頭痛、不眠、抑うつ、イライラ、食欲不振などを訴える患者の症状のひとつひとつに処方を始めると抗不安薬、鎮痛剤、睡眠薬、抗うつ薬、気分安定剤などがあっという間に処方箋に並び、患者はそれを飲むことになる。

「症状の向こうに何があるのか。どんな病気かを見立てて処方しないとね」

と中井さんは言葉を続けた。

 症状がなくなればいいという考えで処方をするのはやめておきなさい。診断して、症状の奥にある疾患を見立て、その疾患に対して薬を出しなさい。それが中井さんの教えだった。

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