IBSに低FODMAP食、有効性の鍵は

改善例でFODMAPを再開し、トリガー成分を検討

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研究の背景:IBSの長期コントロールには、低FODMAP食の個別化が必要

 過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome;IBS)は、海外だけでなく日本においても罹患者の多い消化器疾患で、有病率は10~15%といわれている(J Neurogastroenterol Motil 2023; 29: 229-237)。近年ではラモセトロンなどの有効な薬剤も開発されてきたが(Clin Gastroenterol Hepatol 2014; 12: 953-959.e4)、食事療法はいまだに治療の中核を成し、薬物療法の有効性を凌駕する( Lancet Gastroenterol Hepatol 2024; 9: 507-520)。

 食事療法の代表が低FODMAP(fermentable oligosaccharides, disaccharides, monosaccharides, and polyol)食である(Gastroenterology 2014; 146: 67-75.e5)。FODMAPは小腸で吸収されにくく、大腸で腸内細菌によって発酵されると腸管腔内で水分とガスが発生し、腹部膨満や下痢の原因となる(Nat Rev Dis Primers 2016; 2: 16014)。

 低FODMAP食のIBSに対する有効性はたびたび報告されているが、含有食品が多岐にわたる、個々の患者によって誘因となる食物が異なるなどの理由から、長期にわたるIBSコントロールに生かすことは容易ではない。低FODMAP食の個別化には、FODMAPのうちどの成分、どの食品が症状のトリガーとなっているかを患者ごとに明らかにするため、低FODMAP食を実施後、徐々にFODMAPを再開してトリガーを見極める方法が取られる。

 今回の研究では、再開期に粉末状FODMAPを用いて、患者ごとにどの成分がIBS症状の再燃に最も寄与しているかを明らかにしている(Gastroenterology 2024; 167: 333-342)。(関連記事「IBSの治療、食事法の効果が薬を上回る?」)

小林 拓(こばやし たく)

北里大学北里研究所病院炎症性腸疾患先進治療センター センター長、消化器内科部長
北里大学医学部消化器内科学 准教授

1998年、名古屋大学医学部卒業。関連病院で研修の後、2004年より慶應義塾大学消化器内科特別研究員として炎症性腸疾患の研究に従事、2008年医学博士。2009年、米・ノースカロライナ大学博士研究員、2012年北里研究所病院消化器内科医長を経て炎症性腸疾患先進治療センター副センター長、2022年より現職。
日本消化器病学会(専門医・指導医・学会評議員・ガイドライン委員)、日本消化器内視鏡学会(専門医・指導医・学術評議員)などに所属。日本炎症性腸疾患学会では国際交流委員会、機関誌編集委員会委員長、European Crohn's and Colitis Organisationのクローン病ガイドライン委員を歴任。

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