ドクターズアイ 菅野義彦(腎臓内科)

腎予後で直接対決?SGLT2阻害薬 vs. GLP-1受容体作動薬

新しいエビデンスと臨床判断

  • Facebookでシェアする
  • Medical Tribune公式X Xでシェアする
  • Lineでシェアする
感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

研究の背景:head to head試験によるエビデンスはない

 今回紹介するのは、糖尿病患者においてSGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬の腎予後に対する影響を比較したデンマークの研究である。慢性腎臓病(CKD)の治療領域ではまだ新人ながら既に横綱の風格があるSGLT2阻害薬、対して米国での糖尿病領域の実績を引っ提げてCKD領域に飛び込んできたのが大型新人GLP-1受容体作動薬。相撲でいえば横綱大の里と安青錦ないしは新進気鋭の熱海富士、義ノ富士による、まさに垂涎の対戦のような研究なのだ。

Jensen SK, Heide-Jørgensen U, Andersen IT, et al. SGLT2 Inhibitors vs GLP-1 Receptor Agonists for Kidney Outcomes in Individuals With Type 2 Diabetes. JAMA Intern Med 2026; 186: 353-361 

 結果を見る前から、それほどのデータがインパクトファクター39.0のJAMA Internal Medicineにもう出たの?と論文のタイトルだけで驚く方もいらっしゃるかもしれない。また論文の抄録を見ても、対象例数はSGLT2阻害薬投与群が3万6,279例、GLP-1受容体作動薬群が1万8,782例で、追跡期間は5年と、高いエビデンスレベルを示しそうな大作である。しかも、両薬で直接比較するRandomized Control Trial(RCT)ではないか―。

 筆頭著者のSimon K. Jensen博士はデンマーク第二の都市であるAarhus(オーフス)大学の内科学、臨床疫学に籍を置く若手医師である。日本でも臨床研究を行う若手医師の統計学的な能力は大いに向上しているが、恐らくそれと同様のキャリアトレーニングを受けていると思われる。責任著者のChristian F. Christiansen博士は同じ施設の指導者、研究チームは同じデンマークのコペンハーゲン大学の臨床薬剤部、同国の観光地であるシェラン島にある病院の循環器科、スウェーデン・カロリンスカ研究所の臨床疫学部の計7人である。

 デンマークのデータベースを用いたとはいえ、合わせて5万例を超える5年予後について、この7人で行ったのであろうか。

 実は、今回の研究はバーチャルなのだ。SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬はそれぞれ腎保護効果に関するエビデンスがあっても、両薬同士で直接比較したhead to head試験によるエビデンスはない。

菅野 義彦(かんの よしひこ)

東京医科大学腎臓内科学分野主任教授

1991年慶應義塾大学医学部卒業。同大学院進学後、米国ジョージワシントン大学、国立衛生研究所に留学。埼玉医科大学腎臓内科、医学教育センター、慶應義塾大学医学部血液浄化・透析センターを経て2013年より現職。2018年より大学病院副院長(医療安全・危機管理)、2024年より大学副学長補佐を務める傍ら2021年システムデザインマネジメント学修士、2025年教育学修士を取得。腎臓・高血圧・透析領域のみならず感染症、老年医学、医学教育などの専門資格を有する。また臨床栄養学に関するオピニオンリーダーの1人でもあり、日本臨床栄養学会、日本病態栄養学会の理事を務める。

  • Facebookでシェアする
  • Medical Tribune公式X Xでシェアする
  • Lineでシェアする