ACS患者ではPCI後早期の血糖変動幅が非責任病変急速進行の独立した予測因子

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 糖尿病や耐糖能異常は冠動脈疾患(CAD)発症リスクを高めるが,初発,再発予防として効果的な血糖管理方法は必ずしも明確ではない。また,重症低血糖も心血管イベントとの関連が報告されている。こうした中,血糖値変動(GV),特に持続血糖測定装置(CGMS)で正確に評価したGVが新たな糖代謝指標として注目されている。横浜市立大学市民総合医療センター・心血管センター内科の片岡俊介氏らは,初回急性冠症候群(ACS)の発症時に経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた88例のGVをCGMSを用いて測定し,冠動脈造影(CAG)所見の1年後の変化を前向きに検討。その結果,平均血糖値変動幅(MAGE)が,PCI後約1年間の非責任病変の急速進行(Rapid Progression;RP)の独立した予測因子であることをCirc J(2015; 79: 2246-2254)に報告。ACS患者では,既にRPとの関連が報告されている高感度CRP(hs-CRP)や多発性複雑病変に加え,GVが再発予防を目的とした積極的な治療必要性の指標となりうるという。

研究者の横顔
片岡氏

横浜市立大学市民総合医療センター心臓血管センター内科
片岡 俊介

 片岡氏は横浜市立大学病院で初期臨床研修を受け,指導医らの優秀さ,臨床や研究に頑張る姿に憧れて循環器内科医になったという。同大学大学院病態制御内科学(梅林敏教授)に2012年に入学,CGMSで測定した糖代謝指標と心血管イベントとの関連を中心に研究に打ち込む一方,同大学市民総合医療センター心臓血管センター内科(木村一雄教授)診療医として勤務している。

 横浜市は全域で救急車に12誘導心電図を標準装備し,救急救命センター・循環器内科医師,救命救急士らが尽力してACS患者を治療可能施設に迅速に搬送するシステムを構築。心臓血管センター内科では年間約400例のPCIが施行される。通常術後1年前後にフォローアップCAGが行われるが,無症候性でもRPを来す症例が散見されるという。同科では,非ST上昇型ACS責任病変のRPが,hs-CRP高値および多発性複雑病変に関連することを既に報告。片岡氏らは,RPを来した患者の多くでGVが高めであったことに着目。今回の研究では,hs-CRPに加えてMAGEが,より積極的な治療を要するRPリスクの高い患者のスクリーニングに有用な可能性が示された。

 CGMSは1日24時間の高血糖と低血糖の出現を全て捕捉しGVを正確に算出できる。現在のところ,ACS患者の短・中期転帰,心臓MRIでの心筋救済指数,責任病変冠動脈プラーク破綻とGVとの関連などが検討されている。同氏は「GV抑制の介入方法と心血管イベント抑制効果が証明されるには,大規模かつ長期の介入研究の結果を待つ必要がある。GVについて,国内からも研究報告が相次いでいる。われわれも症例を集積し,臨床に還元できる研究につなげていきたい」と述べている。

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