アトラウマティックという選択肢
研究の背景:腰椎穿刺後の頭痛を防ぐ良い方法はないのか
男は技術に惹かれる。女もそうなのかもしれないが、なったことがないので分からない。医療の世界でも技術の要素は満載で、内科系外科系を問わず、われわれはさまざまな技術の習得に血眼になる。これは、一種のフェティシズムといってよいのではないだろうか。
僕が「ハマった」のは腰椎穿刺だ。これをいかに早く、上手にやるかについては随分と研究した。特に、背中の皮下脂肪が厚い肥満者の多い米国では工夫した(難しかったので)。
他の医師が「どうしても入らない」と絶望的な顔をしているとき、「どれ、ちょっとやらせてみな」とおもむろに出ていって、スパッと針を刺し、タラリタラリと髄液が出てくるのを見ると、「やったぜ!」、と思わず喜んでしまう。最近は、手技はすっかりご無沙汰になり、老眼も進み、「先生、ライン入れてください」とか言われようものなら、「そのへんの若いものに...」と尻尾を巻いて逃げてしまう僕だが、腰椎穿刺だけは今やっても、たぶん、たいていの若手より上手だ...ってこの記事、部内者に読まれたらやらされそうだから、過去の甘美な(たぶん、かなりのインフレを起こしている)思い出に浸るのは、このくらいにしておく。
腰椎穿刺の技術はある程度完成されたもので、スタイレット(内筒)を再挿入して頭痛を減らす、みたいなマイナーチェンジはあるものの、それほど大きな変化は起きてこなかった。
時に、腰椎穿刺は比較的安全な手技であるが、合併症の頭痛が主治医の頭痛の種でもあった。先の「スタイレットを戻す」は頭痛を減らす良い方法だが、逆に言えば他に良い方法があまりなかった。昔は手技の後「しばらく寝ておいてください」、なんてよく言ったものだが、寝ていても頭痛は減らないことが分かっている。
腰椎穿刺患者の約3割に起きるといわれる頭痛。この予防に、何か良い方法はないものか。腰椎穿刺に「大きな変化」は起きるのか。
と思っていたとき、ふと見つけたのが今回紹介する、この論文である。
全文を読むにはログインが必要です
ログインして全文を読む
無料でいますぐ
会員登録を行う
- ご利用無料、14.5万人の医師が利用
- 医学・医療の最新ニュースを毎日お届け
- ギフト券に交換可能なポイントプログラム
- 独自の特集・連載、学会レポートなど充実のコンテンツ
\ 60秒でかんたん登録 /
会員登録
岩田 健太郎(いわた けんたろう)

1971年、島根県生まれ。島根医科大学卒業後、沖縄県立中部病院、コロンビア大学セントルークス・ルーズベルト病院、アルバートアインシュタイン医科大学ベスイスラエル・メディカルセンター、北京インターナショナルSOSクリニック、亀田総合病院を経て、2008年より神戸大学大学院医学研究科教授(微生物感染症学講座感染治療学分野)・神戸大学医学部付属病院感染症内科診療科長。 著書に『悪魔の味方 — 米国医療の現場から』『感染症は実在しない — 構造構成的感染症学』など、編著に『診断のゲシュタルトとデギュスタシオン』『医療につける薬 — 内田樹・鷲田清一に聞く』など多数。
.jpg)









