膝OA国際GL改訂、日本人好みの薬が大躍進

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GL改訂の背景:OAは運動器医療の最大の疾患

 子供のころから人に嫌われ続けているうちに、人の嫌悪や憎悪が快感になってきた。そこまではよい(よくないか)が、最近はライフラインになってきた。水や電気と同じで、これがないと生命の危機である。ここまでなるとビョーキ以外の何物でもない。かなりヤバい。

 ご存じの通り、変形性関節症(OA)は四肢・脊椎全ての関節が罹患する疾患であり、患者数は骨粗鬆症や関節リウマチをはるかに上回っている。われわれ整形外科医が扱う運動器医療の領域では最大の疾患であり、その治療法の開発は国際的な課題といえる。

 というわけで今回は、快感も水も電気もガマン。読者の先生方のお役に立つことを念頭に置いて、最新のOAの国際治療ガイドライン(GL)を紹介する。OA唯一の国際学会である国際変形性関節症学会(OARSI)が定期的に策定しているGLで、5年ぶりの大幅改訂である(Osteoarthritis Cartilage 2019;27:1578-1589)。

 膝関節、股関節、全身の複数関節のOAを対象とした保存療法のGLであるが、ここでは膝関節に関する改訂内容を中心に解説したい。

 さて、現在世界中で上市されているOA治療薬は、痛みを主とした臨床症状に対する対症療法(symptom modification)を基盤としており、関節軟骨を保護・修復する原因療法(structure modification)はほとんど評価基準とはなっていない。理由は、関節軟骨に対する効果を客観的に評価する方法がないからである。この点が、骨密度や骨折率が厳格なアウトカムメジャーとなる骨粗鬆症との違いである。

 したがって、本GLを含むOA治療GLは、WOMAC(Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index)やNRS(numerical rating scale)などの鎮痛効果を主要評価項目としたものであることを念頭に置いて読んでいただきたい。

川口 浩(かわぐち ひろし)

1985年、東京大学医学部医学科卒業。同大学整形外科助手、講師を経て2004年に助教授(2007年から准教授)。2013年、JCHO東京新宿メディカルセンター脊椎脊髄センター・センター長。2019年、東京脳神経センター・整形外科脊椎外科部長。臨床の専門は脊椎外科、基礎研究の専門は骨・軟骨の分子生物学で、臨床応用を目指した先端研究に従事している。Peer-reviewed英文原著論文は300編以上(総計impact factor=1,643:2019年6月現在)。2009年、米国整形外科学会(AAOS)の最高賞Kappa DeltaAwardをアジアで初めて受賞。2011年、米国骨代謝学会(ASBMR)のトランスレーショナルリサーチ最高賞Lawrence G.Raisz Award受賞。座右の銘は「寄らば大樹の陰」「長いものには巻かれろ」。したがって、日本の整形外科の「大樹」も「長いもの」も、公正で厳然としたものであることを願っている。

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