フレイル合併AFにはDOACよりワルファリン!?

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研究の背景:出血性イベントのリスクを考慮すればDOACが好ましい?

 心房細動(AF)は非常に日常臨床で出会う確率の高い、コモンな循環器疾患といえるだろう。実際、大学病院にもプライマリケアのクリニックにも毎日診療をしていれば、少なくとも複数名のAF患者さんを診ることとなる。AFといえば、現在循環器内科の世界ではカテーテルアブレーション技術の進歩によって適応のある患者に対してAF自体を治療する、いわゆる「リズムコントロール」が多く行われるようになっているが、もう1つAFに対する大事な治療として、血栓塞栓症を予防する目的で行う抗凝固療法がある。

 ご存じのように、現在のガイドラインでは、CHA2DS2-VAScスコアを用いて個々の患者に対する血栓塞栓症のリスク層別化を行い、リスクがあると考えられる患者に対しては直接経口抗凝固薬(DOAC)もしくはビタミンK拮抗薬(ワルファリンなど)の投与が推奨されている。

 これまでの多くの研究において、ビタミンK拮抗薬とDOACは同等の血栓塞栓症予防効果が示されており、一部の試験において出血性イベントの頻度がビタミンK拮抗薬よりも低いことが報告されていた。また、過去のDOACの有効性・安全性を検証したサブ解析において、この出血性イベントの差は特に転倒歴がある患者(Am J Med 2018; 131: 269-275)や高齢者(Cardiovasc Drugs Ther 2020; 34: 555-568)、腎機能低下を来している患者(Eur Heart J 2012; 33: 2821-2830)においてより明らかである可能性が指摘されており、おそらく私も含めて多くの医師が「出血性イベントのリスクを考慮すると、フレイル合併AF患者においてはビタミンK拮抗薬よりもDOACが好ましい」と考えていた(はず)。

末永 祐哉(まつえ ゆうや)

順天堂大学循環器内科学講座准教授。2005年鹿児島大学医学部卒業、その後亀田総合病院で初期研修医から循環器内科後期研修医、医長となるまで10年勤務し、2014年から18年までオランダ・フローニンゲン大学循環器内科でリサーチフェローとして心不全に関する臨床研究を行う。帰国した後は現職で心不全・心筋症の臨床および臨床研究に従事している。U-40心不全ネットワーク創立メンバー。

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