視力検査不要の時代がやって来る?

画像から視力を推定するAI活用の可能性

  • Facebookでシェアする
  • Medical Tribune公式X Xでシェアする
  • Lineでシェアする
感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

研究の背景:視力はAIでどこまで予測できるか?

 眼科診療において、「視力」は患者のQOLを大きく左右する最も基本的なアウトカムである。他方、正確な測定には視標・環境・検者・被検者の協力といった人的・物理的条件が整っていることが不可欠である。視力に直結する網膜疾患の診療に携わると、視力という測定環境や患者状態、検者の手技に左右されやすく、再現性に限界を伴う可変的かつ主観的な指標を、定量的かつ客観的に評価する手段の限界を感じることがあるのではないだろうか。

 そのため、人工知能(AI)による画像解析技術が進展する中で「眼底画像や光干渉断層計(OCT)画像といった定量的かつ非侵襲的な情報から、視力という自覚的アウトカムをどこまで予測・代替できるのか」という問題に大きな関心が寄せられている。今回は、糖尿病黄斑浮腫(DME)の既往歴がある患者における眼底写真からの常用矯正視力(SCVA)推定に関する研究(JAMA Netw Open 2025; 8: e2453770)について考察したい。特に、近々日本でも導入が始まると考えられる眼科遠隔医療やAI診療支援システムにおいて、本研究のような手法は極めて実践的かつ示唆に富むアプローチであると考える。

柳 靖雄(やなぎ やすお)

医療法人社団祥正会お花茶屋眼科手術外来院長、横浜市立大学視覚再生外科学客員教授、デューク・シンガポール国立大学医学部Adjunct Professor

東京大学医学部を卒業(1995年、MD)し、同大学大学院で医学博士号を取得(2001年、PhD)。基礎医学に強固な学術的バックグラウンドを持ち、200本以上の科学論文を執筆、国内外で10以上の賞を受賞。東京大学医学部眼科学教室講師(2012~2015年)、デューク・シンガポール国立大学医学部准教授(2016~2020年)、旭川医科大学眼科学教室教授(2018~2020年)を歴任し、現在は横浜市立大学視覚再生外科学客員教授(2020年~)およびデューク・シンガポール国立大学医学部Adjunct Professor(2020年~)として国際共同研究に積極的に関与している。専門は黄斑疾患で、新規治療薬に関する特許を多数出願。スタンフォード大学とエルゼビア社が2024年に発表した「世界のトップ2%の科学者リスト」に選出された。DeepEyeVisionの取締役としてAI技術の開発に携わり、国際誌「TVST」や「Scientific Reports」の編集者としても日本のプレゼンス向上に貢献。都内のクリニックでは質の高い診療を提供し、地域医療にも尽力。現在、医療経済研究、創薬、国際共同臨床研究など多岐にわたる分野で積極的に活動している。

柳 靖雄
  • Facebookでシェアする
  • Medical Tribune公式X Xでシェアする
  • Lineでシェアする