研究の背景:これまで存在しなかった中心視野障害を回復させるための治療 網膜は中枢神経に属するため、失われてしまった神経回路は再生することがない。このため、加齢黄斑変性(AMD)による地図状萎縮(GA)患者の失われた中心視野を回復する治療は存在しなかった。 Photovoltaic Retina Implant MicroArray systemまたはPRIMA neurostimulation systemと呼ばれるPRIMAシステムは、GAによる中心視野障害を回復させることを目指した光駆動による無線型網膜下インプラントであり、失われた光受容体の代わりに残存する内層の網膜ニューロンを電気刺激することで視覚情報を再導入し、視覚知覚の回復を目的としている。その革新的な設計により安全性を確保しつつ、自然視野を維持しながら中心網膜に補綴的視覚入力をもたらすという特徴がある。元企業の財政難、新興ブレインチップ企業による買収、その後の大規模臨床試験の成功という、劇的な経緯を経て開発されてきたPRIMAシステムについて紹介する(N Engl J Med 2025年10月20日オンライン版)。